採用担当者がいない会社はどうする?中小企業の採用の進め方

採用担当者がいない中小企業向けに、採用前に決めること、経営者・現場・兼任担当者の役割分担、外部化の考え方、専任化を検討するタイミングまで解説します。
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「採用したいが、専任の採用担当者がいない」「総務や経営者がほかの業務と兼務している」という会社もあります。
Indeed Japanが2021年に採用実務担当者1,647名を対象に実施した調査では、72.4%が採用・人事以外の業務も兼務していました。従業員300名以下の企業では、業務時間のうち採用に割いている時間は平均35.5%でした。
専任担当者がいなくても、採用活動を進めることはできます。
ただし、「採用は総務の○○さんに任せる」と一人にまとめるだけでは、判断や応募者対応が止まりやすくなります。採用には、条件を決める人、求人や応募対応を動かす人、候補者と面接する人など、複数の役割があるためです。
そこで最初に考えたいのは、「誰を採用担当者にするか」ではなく、「採用にはどんな仕事があり、それぞれ誰が担当するか」です。
この記事では、専任の採用担当者がいない中小企業を想定し、採用を始める前に決めること、社内の役割分担、外部支援の使い方、専任化を検討するタイミングまで整理します。
採用担当者がいなくても採用活動は進められる
専任の採用担当者がいないこと自体が、採用できない原因になるわけではありません。
採用人数や募集職種が限られている会社なら、経営者・現場責任者・総務などが役割を分担して進める方法もあります。
問題になりやすいのは、採用に関する責任が曖昧な状態です。
たとえば、
- 採用する人数や条件を誰が決めるのか
- どんな経験を求めるのか誰が決めるのか
- 求人票を誰が作るのか
- 応募が来たら誰が確認するのか
- 面接は誰が行うのか
- 最終的な採否を誰が判断するのか
が決まっていなければ、採用活動の途中で判断待ちが発生します。
「採用は総務のAさん」と一括りにするのではなく、仕事内容の整理は現場責任者、条件の最終判断は経営者、求人掲載や応募対応は兼任担当者というように、仕事ごとに担当を決めます。
求人を出す前に、まず5つを決める
採用担当者がいない会社ほど、「まず求人媒体に掲載しよう」と手段から考えがちです。
しかし、媒体を決める前に採用計画の土台を整理しておかなければ、求人票の内容や採用方法も判断しにくくなります。
最低限、次の5つを確認します。
1.なぜ採用するのか、何人をいつまでに採るのか
最初に整理するのは、採用の目的・人数・期限です。
「人手不足だから採用する」だけではなく、もう一段具体化します。
たとえば、
- 退職者1名の欠員を補充したい
- 新規事業の開始までに2名増員したい
- 営業担当者の業務量を分散するために1名採用したい
といった形です。
ここが曖昧なままだと、「よい人がいれば採用する」という状態になり、採用条件や優先順位を決めにくくなります。
採用できなかった場合に、どの業務へ影響が出るのかも確認しておきましょう。
2.誰に、どんな仕事を任せるのか
次に、採用する人へ任せる仕事を整理します。
「営業経験者を募集する」だけでは、採用したい人物像はまだ明確ではありません。
同じ営業でも、
- 新規顧客の開拓が中心なのか
- 既存顧客への提案が中心なのか
- 個人向けなのか法人向けなのか
- 入社直後から成果を求めるのか
- 入社後に商品知識を身につけてもらうのか
によって必要な経験は変わります。
仕事内容から逆算して、入社時点で必要な条件と入社後に身につけてもらえる条件を分けます。
条件を増やすことではなく、本当に必要な経験やスキルを整理することが目的です。
3.どの条件で募集するのか
仕事内容とあわせて、募集条件も確認します。
たとえば、
- 給与
- 勤務地
- 勤務時間
- 働き方
- 雇用形態
- 必要な経験
などです。
社内では妥当だと思っている条件でも、同じ職種を募集する企業と比較すると差がある場合があります。
求人を公開する前に、同じ地域・職種・経験層を募集している求人も確認し、自社の条件や仕事内容が候補者からどう見えるかを把握しておくと判断しやすくなります。
4.どこで候補者と出会うのか
採用したい人物像と条件が整理できたら、候補者との接点を考えます。
採用方法には、
- 求人媒体
- 人材紹介
- スカウト
- ハローワーク
- リファラル採用
などがあります。
適した方法は、募集職種・経験・地域・採用人数などによって変わります。
「以前使った媒体だから」「知っているサービスだから」という理由だけで決めるのではなく、今回採用したい人と接点を持てるかという視点で選びます。
5.社内で誰が担当するのか
最後に、採用活動を誰が担当するか決めます。
ここでは「採用担当者」という役職だけで考えず、「誰が判断するのか」「誰が実際に動かすのか」まで分けます。
次のように採用業務を3つに分解すると、役割を整理しやすくなります。
採用業務を「決める・動かす・向き合う」に分ける
専任担当者がいない会社では、採用業務を「決める」「動かす」「向き合う」の3つに分けて考えてみましょう。
これは法律上決められた役割分担ではなく、社内の採用体制を整理するための実務上の考え方です。
「決める」仕事
会社として判断する仕事です。
たとえば、
- 採用目的
- 採用人数・期限
- 採用したい人物
- 任せる仕事内容
- 給与・条件
- 最終的な採否
などがあります。
経営課題や実際の仕事内容を理解している経営者・現場責任者が中心となり、会社としての方針を決めます。
「動かす」仕事
決めた内容を、実際の採用活動へ落とし込む仕事です。
たとえば、
- 求人票を作成・更新する
- 求人媒体へ掲載する
- 人材紹介会社と連絡する
- スカウトを送る
- 応募者へ連絡する
- 面接の日程を調整する
- 選考状況を管理する
といった業務があります。
この部分は、兼任担当者だけでなく、ツールや外部サービスも活用しやすい領域です。
「向き合う」仕事
候補者と直接コミュニケーションを取る仕事です。
- カジュアル面談
- 面接
- 仕事内容の説明
- 会社やチームの説明
- 候補者からの質問への回答
などがあります。
仕事内容なら現場責任者、事業や会社の方向性なら経営者というように、候補者の疑問へ具体的に答えられる人が関わります。
採用担当者がいない会社の役割分担例
| 採用業務 | 主な内容 | 担当例 |
|---|---|---|
| 決める | 採用目的・人数・期限・仕事内容・条件・採否 | 経営者、現場責任者 |
| 動かす | 求人掲載・応募対応・スカウト・日程調整・進捗管理 | 兼任担当者、ツール、外部支援 |
| 向き合う | 面談・面接・仕事内容や会社の説明 | 経営者、現場責任者、現場メンバー |
実際の分担は、会社の規模や募集職種、社内体制によって変わります。
大切なのは、採用業務を一括りにせず、仕事ごとに担当を決めることです。
兼任でも採用を止めないために、窓口と対応ルールを決める
役割分担をしても、誰も採用全体の進捗を見ていなければ活動は止まります。
数字の確認と、次の行動を決める担当をセットで整理する考え方は、サイヨミの「KPI・運用体制を見る」観点でも説明しています。
専任担当者がいない場合でも、採用の窓口となる人を一人決めると管理しやすくなります。
窓口担当者が、採用についてすべて判断する必要はありません。
たとえば、
- 新しい応募が来ていないか確認する
- 書類確認を現場責任者へ依頼する
- 面接の日程を調整する
- 誰の判断待ちなのか確認する
- 次のアクションが決まっているか確認する
といった交通整理を担当します。
「誰が次に何をするか」を分かる状態にする
兼務採用では、本業を優先した結果、応募者対応が止まることがあります。
そのため、
- 応募を誰が確認するか
- 書類を誰が判断するか
- 面接候補日を誰が出すか
- 次の連絡を誰がするか
をあらかじめ決めておきます。
一律に「○時間以内に対応する」と決めるより、まずは担当者が分からないために放置される状態をなくすことが先です。
選考状況を共有できるようにする
最初から大規模な採用管理システムを導入する必要はありません。
少なくとも、
- 候補者名
- 現在の選考段階
- 次のアクション
- 担当者
- 必要に応じて対応期限
を関係者が確認できる状態にします。
応募数や募集職種が増え、管理が難しくなった段階で採用管理ツールなどを検討してもよいでしょう。
担当者・選考状況・次の対応をまとめる資料として、採用管理シートを使えます。
自社で抱えきれない仕事は、効率化・外部化する
採用担当者がいないからといって、必ず採用代行やRPOを利用する必要はありません。
先に採用業務を分け、どこに負担が集中しているのかを確認します。
ツールで効率化しやすい仕事
たとえば、
- 面接の日程調整
- 応募者の管理
- 定型的な連絡
- 選考進捗の管理
などです。
作業量が問題なのであれば、人を増やす前にツールで負担を減らせる場合があります。
外部へ任せやすい仕事
外部の採用支援会社へ依頼できる業務には、
- 求人票作成の支援
- スカウト運用
- 候補者への連絡
- 面接の日程調整
- 採用施策の分析
などがあります。
ただし、サービスによって対応範囲は異なります。
「採用代行を利用すればすべて任せられる」と考えるのではなく、自社が困っている業務とサービスの支援範囲が合っているかを確認します。
社内に残した方がよい判断もある
外部支援を使う場合でも、
- なぜ採用するのか
- 誰を採用するのか
- 何を任せるのか
- どの条件を提示するのか
- 最終的に誰を採用するのか
といった会社としての判断は、外部へ任せきりにせず、自社で最終判断を持つことが重要です。
採用担当者がいない会社では、「外注するか、しないか」ではなく、「何を自社で持ち、何を外に出すか」から考えると整理しやすくなります。
自社の採用で、求人・ターゲット・競合・スカウトなどのどこから見直せばよいか分からない場合は、一度採用活動を整理する方法もあります。サイヨミの「採用の棚卸し」では、現在の施策を確認し、改善の優先順位を整理します。
専任の採用担当者を置いた方がよいケースもある
専任担当者がいなくても採用活動は進められますが、ずっと兼務体制が適しているとは限りません。
採用活動の規模や頻度が増えたら、専任化も選択肢になります。
採用する人数・職種が増えてきた
複数の職種を同時に採用すると、
- 求人情報の管理
- 応募者対応
- 人材紹介会社との連絡
- 面接調整
- 選考状況の確認
- 求人内容の改善
などの業務も増えます。
一時的に1名を採用する会社と、複数職種を継続して募集する会社では、必要な採用体制が異なります。
採用活動が年間を通して続いている
年間を通じて採用している場合は、採用が一時的な業務ではなくなります。
求人を掲載して終わりではなく、応募状況を確認したり、採用チャネルや求人内容を見直したりする仕事も継続的に発生します。
兼任では管理しにくくなっているなら、専任担当者や明確な採用責任者を置くことも検討します。
兼任担当者の本業に支障が出ている
もう一つの判断材料が、現在の体制を続けられるかどうかです。
たとえば、
- 採用対応のため本来の業務が進まない
- 応募者への連絡が継続的に遅れる
- 誰も現在の採用状況を把握していない
という状態なら、役割分担を見直した方がよいでしょう。
役割分担や外部支援を検討する前に、兼任担当者がどの業務にどれだけ時間を使っているかを把握する方法は、採用工数の計算・見える化で確認できます。
この場合は、
- 専任担当者を置く
- 外部支援を利用する
- ツールで作業を減らす
- 社内の役割を組み替える
といった方法を比較します。
「採用担当者を採用するか」だけではなく、現在どこで採用業務が詰まっているのかを見て判断します。
採用担当者がいない会社が、まずやること
採用体制を一度に完成させる必要はありません。
最初は次の順番で整理すると進めやすくなります。
1.採用目的・人数・期限を決める
なぜ採用するのか、何人をいつまでに採りたいのかを整理します。
2.誰に何を任せるのか決める
仕事内容から必要な経験・スキルを考えます。
3.採用業務を「決める・動かす・向き合う」に分ける
採用を一人へ丸ごと渡さないために、仕事を分解します。
4.経営者・現場・兼任担当者の役割を決める
それぞれの仕事について、判断する人と実行する人を決めます。
5.採用したい人に合ったチャネルを選ぶ
求人媒体、人材紹介、スカウトなどから必要な方法を検討します。
6.負担の大きい部分だけ効率化・外部化する
自社で抱えなくてもよい業務があれば、ツールや外部支援を利用します。
採用体制を整えて求人を掲載しても応募が集まらない場合は、体制とは別に「どこで候補者が減っているのか」を確認する必要があります。詳しくは求人を出しても応募が来ない原因は?求人票を直す前に確認したいポイントで解説しています。
まとめ|採用担当者がいないなら、採用の「役割」を先に決める
専任の採用担当者がいなくても、採用活動は進められます。
まず整理したいのは、
- なぜ採用するのか
- 何人をいつまでに採るのか
- 誰に何を任せるのか
- 誰が判断するのか
- 誰が実際の採用業務を動かすのか
です。
そのうえで、採用業務を「決める・動かす・向き合う」に分け、経営者・現場責任者・兼任担当者などへ割り振ります。
社内だけでは負担の大きい仕事があれば、ツールや外部支援を利用する方法もあります。一方、採用量が増えて兼務では回らなくなっているなら、専任担当者を置くことも検討します。
採用担当者という役職を先に作るのではなく、自社の採用に必要な役割を先に決める。
そこから始めると、自社に必要な採用体制や採用方法を判断しやすくなります。


