採用マーケティングとは?中小企業が実践する5つの手順と考え方

採用マーケティングとは何かを、中小企業向けにわかりやすく解説。採用ターゲット、訴求、チャネル、数値確認の考え方と、実践する5つの手順を紹介します。
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採用マーケティングは、SNSで発信したり、採用サイトを作ったりすることだけを指す言葉ではありません。
簡単にいえば、「誰を採用したいのか」「その人に何を伝えるのか」「どこで接点を持つのか」を考え、応募や返信などの結果を見ながら採用活動を改善する考え方です。
特に、採用に使える人員や予算が限られる中小企業では、施策を増やすこと自体が目的になってしまうと運用が回らなくなります。求人媒体、スカウト、採用サイト、SNSなどを一つずつ別の施策として見るのではなく、自社の採用課題に合わせて優先順位を決めることが重要です。
この記事では、採用マーケティングの意味から具体的な施策、中小企業が実践する5つの手順まで解説します。
採用マーケティングとは
採用マーケティングとは、一般にマーケティングの考え方や手法を採用活動へ取り入れることを指します。
採用したい人を整理し、自社について何を伝えるか、どこで接点を持つかを設計し、その結果を確認しながら改善していきます。
dodaでも、採用マーケティングを「マーケティングの考え方や手法を取り入れた採用活動」と説明し、認知から応募、選考、入社までをファネルとして捉えています。
たとえば求人媒体を利用する場合でも、「求人を掲載した」で終わりではありません。
- 誰を採用したいのか
- その人は何を知りたいのか
- なぜその媒体を使うのか
- 求人は見られているのか
- 見た人が応募しているのか
まで一連で考えます。
採用マーケティングのポイントは、SNSや広告などの特定施策ではなく、採用活動全体を候補者側の動きから見ることにあります。
求人を掲載するだけの採用と何が違うのか
求人媒体への掲載も、採用マーケティングで使う施策の一つです。
違うのは、「求人を出した」という事実だけで成果を判断しないことです。
たとえば「求人を出しているのに応募が来ない」という場合でも、
表示されていない
→ 求人詳細を見られていない
→ 求人は読まれているが応募されていない
では、確認すべき場所が違います。
求人そのものが十分に表示されていなければ、本文を書き直す前に媒体や職種名、求人タイトルなどを見る必要があるかもしれません。
一方、求人詳細までは見られているのに応募されていないのであれば、仕事内容、採用条件、訴求内容などを確認する余地があります。
「応募が少ないから求人票を直す」と単純化せず、候補者がどこで減っているのかを分けて考えることが重要です。
求人を出しても応募が来ない場合の確認方法については、求人を出しても応募が来ない原因は?求人票を直す前に確認したいポイントでも詳しく解説しています。
採用マーケティングの対象は転職活動中の人だけではない
採用マーケティングを広く捉えると、対象は現在転職活動をしている人だけではありません。
dodaでは、転職希望者を潜在層と顕在層に分けたうえで、アルムナイ(退職者)、自社の従業員、過去に応募したものの入社に至らなかった人材なども対象として挙げています。
ただし、すべての企業がこれらすべてを対象に施策を行う必要はありません。
本記事では、中小企業がまず取り組みやすい範囲として、これから採用候補となる人との接点から応募・返信までを中心に考えます。
採用広報・採用ブランディングとの違い
採用マーケティングと似た言葉に、「採用広報」「採用ブランディング」があります。
これらに唯一の統一定義があるわけではありませんが、本記事では次のように整理します。
| 項目 | 主に考えること |
|---|---|
| 採用マーケティング | 誰に、何を、どこで伝え、結果をどう改善するか |
| 採用広報 | 会社・仕事・社員などについて何を発信するか |
| 採用ブランディング | 候補者からどのような会社として認識されたいか |
たとえば社員インタビュー記事を公開することは、採用広報の施策の一つです。
採用マーケティングでは、その前後まで考えます。
「誰に読んでもらうのか」「その候補者は何を知りたいのか」「記事を読んだあと、どこにつなげるのか」といった設計です。
採用広報や採用ブランディングを含む個別施策を、採用全体の中でどう位置づけるかを見る考え方だと捉えると分かりやすいでしょう。
なぜ中小企業にも採用マーケティングが必要なのか
採用マーケティングは、大企業や大量採用を行う企業だけのものではありません。
マイナビの「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」では、2026年の中途採用について91.1%の企業が積極的な意向を示し、経験者採用に積極的な企業も74.2%でした。
この調査は従業員3名以上の企業で中途採用に携わる人事担当者1,500名を対象としており、中小企業だけを対象とした数字ではありません。ただし、企業全体で中途採用意欲が高い状況を示すデータの一つです。
知名度や採用予算で大企業と同じ勝負ができない会社ほど、「どんな人なら自社を選ぶ理由があるのか」を具体的に考える必要があります。
企業だけでなく候補者も会社を比較している
企業が候補者を選考する一方で、候補者も企業を比較しています。
判断材料は給与や休日だけではありません。
- どのような仕事をするのか
- どこまで仕事を任せてもらえるのか
- どのようなキャリアにつながるのか
- どう評価されるのか
- どのような働き方ができるのか
- どのような人と働くのか
といった情報も、応募先を考える材料になります。
マイナビの「転職動向調査2026年版(2025年実績)」では、転職理由として「給与が低かった」が最多だった一方、転職者の52.6%が前職で自身のキャリアに停滞感を感じていたと回答しています。
企業が言いたいことだけではなく、候補者が転職先を判断するために知りたいことを伝えられているかを見る必要があります。
知名度や給与以外の「選ぶ理由」を事実から探す
中小企業が大企業と同じ給与や制度を用意できるとは限りません。
だからといって、
「アットホームな会社です」
「成長できる環境です」
「風通しの良い職場です」
といった抽象的な表現を増やしても、その会社で働く違いは伝わりにくいでしょう。
見るべきなのは、実際の仕事や会社に存在する事実です。
たとえば、
- 入社後に任せる仕事
- 顧客との距離
- 意思決定に関われる範囲
- 評価のされ方
- キャリアの選択肢
- 働き方
- 社員が入社した理由
- 現在も働いている理由
などがあります。
リクルートワークス研究所は、若手社会人の「辞めない理由」を調査し、自社で活躍する中核人材への聞き取りや、キャリアパス、仕事のやりがいなどを分析することで、自社ならではの「辞めない理由」を捉える考え方を示しています。
なお、この調査は従業員300人以上の企業で働く20〜39歳の正規雇用者を対象としたものであり、中小企業を対象とした調査ではありません。既存社員から自社で働く価値を探る考え方として参考にするとよいでしょう。
マーケティングの領域では、企業が従業員に提供できる価値をEVP(Employee Value Proposition/従業員価値提案)と表現することもあります。
ただし、最初から難しい言葉に置き換える必要はありません。
「この会社・この仕事だから候補者に提供できるものは何か」を、実態から探すことが先です。
採用マーケティングに取り組むメリット
採用マーケティングを取り入れれば、必ず応募数が増えたり、採用コストが下がったりするわけではありません。
実務上の大きなメリットは、採用施策を判断するための基準を持ちやすくなることです。
採用したい人に合わせて施策を選びやすくなる
採用ターゲットが曖昧なままだと、「応募が来ないから別の求人媒体を使う」「最近よく聞くからSNSを始める」といった施策先行になりやすくなります。
誰を採用したいのかが明確になれば、
- どの求人媒体を使うか
- 人材紹介を使うか
- スカウトを使うか
- SNSや採用広報に取り組むか
を、その候補者との接点から考えられます。
求人やスカウトで伝える内容を決めやすくなる
採用ターゲットと、自社が提供できる価値を整理すると、候補者に何を伝えるべきかも考えやすくなります。
同じ会社でも、すべての候補者が同じ情報を魅力に感じるとは限りません。
自社が伝えたい情報を並べるのではなく、候補者の関心と、自社が事実として伝えられる内容が重なる場所を探すことが重要です。
採用のどこを改善すべきか判断しやすくなる
採用活動を一つの結果ではなく、複数のプロセスに分けて見れば、どの段階から改善すべきかを考えやすくなります。
「応募数が少ない」という結果だけを見て施策を変更するのではなく、その前段階から確認できることが、採用マーケティングを取り入れるメリットの一つです。
採用マーケティングでは何を設計するのか
採用マーケティングを実務へ落とすときは、大きく5つに分けて考えると整理しやすくなります。

1.誰を採用したいのか
最初に決めるのは採用ターゲットです。
ただし、架空の人物像を細かく作り込むこと自体が目的ではありません。
まず確認したいのは、
- なぜ採用するのか
- 入社後に何を任せるのか
- その仕事に必要な経験・スキルは何か
- 絶対に必要な条件は何か
- 入社後に育成できるものは何か
- どのような経験を持つ人が候補になり得るか
です。
特に、「本当にその条件が必須なのか」は見直したいポイントです。
理想の人物像を考えているうちに、「必須」と「あれば望ましい」が混ざると、候補者を必要以上に狭めてしまいます。
採用ターゲットは、求人、スカウト、採用チャネルを判断できる状態にするために作るものと考えるとよいでしょう。
候補者の経験や転職先を選ぶ理由まで具体化する方法は、採用ペルソナの作り方で詳しく整理しています。
2.候補者に何を伝えるのか
次に、候補者へ伝える内容を考えます。
材料になるのは、
- 募集背景
- 仕事内容
- 入社後の役割
- 評価方法
- キャリア
- 働き方
- 既存社員の声
- 採用競合の求人
などです。
競合求人を見る理由は、相手の表現を真似するためではありません。
候補者は自社の求人だけを見て応募先を決めるわけではないため、同じ候補者を採用しようとしている企業が、どのような情報を提示しているかを確認するためです。
自社の魅力を無理に作るのではなく、すでに存在する事実の中から、候補者にとって意味のある情報を選びます。
候補者に合わせて発信内容を設計する方法は、採用広報の進め方を参考にしてください。
3.どこで候補者と接点を持つのか
採用チャネルには、
- 求人媒体
- 人材紹介
- ダイレクトスカウト
- 採用サイト
- SNS
- リファラル
などがあります。
どれか一つが常に優れているわけではありません。
見るべきなのは、採用したい人との接点として、そのチャネルが適しているかです。
現在求人媒体や人材紹介、RPOなどを利用している場合も、成果が出ていないからとすぐに否定する必要はありません。
まず、
- どの職種を採用したいのか
- どのような候補者へ接触したいのか
- そのチャネルではどこまでできているのか
を確認します。
合っているものは続け、改善余地があるものは改善し、必要なら別の方法を検討します。
4.候補者が応募・返信するまでの体験を確認する
候補者との接点を作っても、知りたい情報がなければ応募にはつながりません。
求人であれば、
- 仕事内容を具体的に理解できるか
- 入社後に任されることが分かるか
- 応募条件を判断できるか
- 働き方や条件が分かるか
を確認します。
スカウトなら、送信対象と訴求内容が合っているかを見ます。
応募後についても、不要な待ち時間や手間がないか、求人で伝えていた内容と選考中の説明に大きな食い違いがないかなど、候補者側から採用プロセスを見ることが重要です。
5.結果を数字で確認する
施策を実行したら、結果を確認します。
求人なら、取得できるデータに応じて、
表示
→ 求人詳細閲覧
→ 応募
→ 書類通過
スカウトなら、
送信
→ 返信
のように分けます。
確認できる項目は求人媒体や採用管理システムによって異なります。すべての数字が揃っていなくても問題ありません。
データがない場合は、「今後どの数字を記録するか」を決めるところから始めます。
たとえば求人の表示数が少ない場合と、十分見られているのに応募されない場合では、改善する場所は同じではありません。
結果を分解して、どこで候補者が減っているのかを見ることが、次の施策を決める材料になります。
候補者との接点から選考までの工程を分け、どこで減っているかを確認する方法は、採用ファネルの見方で整理しています。
採用マーケティングの具体的な施策
採用マーケティングには多くの施策があります。
ただし、施策を一覧から選ぶのではなく、先に課題を確認し、その課題に合った手段を選ぶことが基本です。
| 課題・目的 | 施策の例 |
|---|---|
| 会社を知ってもらう | 採用サイト、SNS、採用広報 |
| 求人を見つけてもらう | 求人媒体、求人タイトル・職種名の見直し |
| 候補者へ直接アプローチする | ダイレクトスカウト、人材紹介 |
| 社員との接点を作る | リファラル、カジュアル面談 |
| 仕事内容を理解してもらう | 求人票、社員インタビュー、仕事紹介コンテンツ |
| 改善する場所を見つける | 求人・スカウト等の数値分析 |
SNSも採用マーケティングの施策になり得ます。
ただし、「採用マーケティングを始める=SNSを始める」ではありません。
まず自社の採用課題を確認し、その課題を解決するために必要な施策を選びます。
採用マーケティングでは、3C分析やCandidate Journeyなどのフレームワークを使って整理する方法もあります。ただし、中小企業が最初から複数のフレームワークを使いこなす必要はありません。
中小企業が採用マーケティングを始める5つの手順
ここまでの考え方を、実際に進める順番にすると次の5つです。
STEP1.採用したい人と任せたい仕事を整理する
最初に考えるのは「どんな人が欲しいか」だけではありません。
- なぜ採用するのか
- 入社した人に何を任せるのか
- そのために何が必要なのか
を先に確認します。
仕事内容から逆算することで、必須条件と歓迎条件も分けやすくなります。
採用要件を考える前に、採用理由と仕事を具体化するのが最初のステップです。
STEP2.自社で働く価値を既存社員や競合求人から確認する
次に、候補者へ伝えられる材料を集めます。
社内だけで「自社の魅力は何だろう」と考えるのではなく、
- 既存社員が入社した理由
- 現在も働いている理由
- 実際の仕事内容
- 自社の求人
- 競合企業の求人
を確認します。
既存社員が感じている価値と、会社側が求人で伝えている内容が一致しているとは限りません。
また競合求人と比べることで、「他社では説明されているのに、自社では書かれていない情報」が見つかることもあります。
STEP3.ターゲットに合う採用チャネルを選ぶ
採用ターゲットと伝える内容が決まったら、候補者との接点を選びます。
ここでも、「新しい媒体を増やす」が最初ではありません。
現在利用している求人媒体、人材紹介、スカウトなどについて、
「なぜこの方法を使っているのか」
を説明できるか確認します。
ターゲットと合っていて成果も出ているなら、続ければよいでしょう。
合っているものを無理に変える必要はありません。
STEP4.求人・スカウト・採用サイトで伝える軸をそろえる
候補者は、一つの接点だけで会社を判断するとは限りません。
求人媒体で知ったあとに会社名を検索したり、スカウトを受け取ったあとに採用サイトを確認したりすることがあります。
そのため、
- 募集背景
- 仕事内容
- 求める経験
- 働き方
- キャリア
- 自社で働く特徴
などの前提が、接点によって大きく食い違わないようにします。
文章をすべて同じにする必要はありません。
伝え方は媒体に合わせながら、採用の軸はそろえるという考え方です。
STEP5.数字を見て、続ける・改善する・優先度を下げるを決める
最後に、実施した施策を評価します。
前述した求人・スカウトなどの数値と運用状況を材料に、
- 続ける
- 改善する
- 優先度を下げる
- 新しく検討する
に分けます。
一度始めたから続ける、成果がすぐに出なかったからやめる、と感覚だけで判断するのではなく、現在の状況から優先順位を決めます。
中小企業では「全部やる」必要はない
採用マーケティングについて調べると、SNS、採用動画、オウンドメディア、リファラル、ダイレクトスカウトなど、多くの施策が見つかります。
しかし、全部やる必要はありません。
むしろ、採用専任者がいないなど運用できる人員が限られている場合、施策を増やしすぎると一つひとつの運用が続かなくなります。
dodaも採用マーケティングを進める際のポイントとして、「施策に優先順位を付けること」「十分なリソースを確保すること」を挙げています。
採用マーケティングは継続的に取り組む必要があり、施策によっては運用のための人員や時間も必要です。
だからこそ、自社の状況を分けて考えます。
求人がほとんど表示されていない
→ 媒体、求人タイトル、職種名などを見る
求人詳細は見られているが応募されない
→ 仕事内容、条件、訴求、採用要件などを見る
スカウトを送っても返信されない
→ 送信対象、利用媒体、訴求内容、文面などを見る
問題を切り分ければ、必要な施策も絞りやすくなります。
採用マーケティングは、施策を増やすためだけではなく、「何を今やるか、何を今はやらないか」を決めるための考え方でもあります。
採用マーケティングを始める前のチェックリスト
新しいツールや媒体を探す前に、まず現在の採用活動について確認してみてください。
- 採用する理由を説明できるか
- 入社後に任せる仕事を具体的に説明できるか
- 必須条件と歓迎条件を分けられているか
- 自社で働く特徴を事実で説明できるか
- なぜ現在の採用チャネルを使っているか説明できるか
- 求人の表示数・閲覧数・応募数を把握できるか
- スカウトの送信数・返信数を把握できるか
- 続ける施策と見直す施策を判断できているか
すべてに答えられる必要はありません。
「どこが分からないのか」が分かれば、次に確認すべき場所を絞れます。
まとめ|採用マーケティングは、採用施策を増やすことではない
採用マーケティングとは、採用したい人を定め、その人に何を伝え、どこで接点を持つのかを考え、結果を見ながら改善していく考え方です。
中小企業が実践するときは、最初からSNSや新しい求人媒体を増やす必要はありません。
まず、
誰を採用したいのか
→ 何を伝えるのか
→ どこで接点を持つのか
→ どこで候補者が減っているのか
→ 何を続け、何を改善するのか
を確認します。
採用マーケティングの目的は、「できる施策を全部やること」ではありません。
自社の採用を一度見える状態にして、今取り組むべきことに優先順位をつけることです。


