選考・体制

面接官マニュアル|初めてでも迷わない採用面接の進め方・質問・NG事項

公開:2026/10/1 更新:2026/10/1 著者:水野徹哉

面接官マニュアルとして、面接前の準備、当日の進め方、質問の作り方・深掘り、候補者への説明、聞いてはいけない事項、面接後の記録・評価まで解説。中小企業でも使える最小構成を整理します。

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初めて面接官を任されると、「何を聞けばよいのか」「どこを見て判断するのか」「聞いてはいけない質問はあるのか」と迷うことがあります。

面接で重要なのは、質問をたくさん用意することではありません。

誰を採用したいのか、何を確認するのか、どの事実をもとに評価するのかを面接前にそろえ、そのルールに沿って進行することが基本です。

厚生労働省も、公正な採用選考を行うため、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておくことを示しています。

この記事では、中小企業の採用担当者や現場責任者が面接官を担当するときに使えるよう、準備から当日の進め方、質問、NG事項、面接後の評価までを一つのマニュアルとして整理します。

面接官マニュアルで最初にそろえる3つ

面接官マニュアルを作るときは、細かなトークスクリプトより先に次の3つを決めます。

  1. 今回の面接で何を確認するか
  2. 何を質問するか
  3. 何を根拠に評価するか

この3つが曖昧なままでは、面接官ごとに「感じがよかった」「話しやすかった」「経験が豊富そう」といった印象で判断しやすくなります。

たとえば営業職で「顧客の課題を整理して提案できること」を評価したいのであれば、単に「コミュニケーション能力を見る」と決めるだけでは不十分です。

「どのような顧客課題を扱ったか」「何を自分で考えたか」「どのように提案したか」と具体的な行動を確認し、その事実を評価基準に照らすところまでそろえます。

評価項目そのものを設計する方法は、採用面接の評価基準の作り方で詳しく整理しています。

質問と評価方法をそろえる理由

採用面接の研究でも、質問や評価方法を一定程度構造化することの重要性が示されています。

McDanielらが1994年に行ったメタ分析では、245の妥当性係数、86,311人分のデータを分析し、構造化された面接の方が非構造化面接よりも職務遂行との関連が高い傾向を示しました。

一方、Sackettらは2022年、従来の人材選抜研究では妥当性が過大に補正されていた可能性を指摘し、複数の選抜方法について推定値を引き下げています。それでも、同研究では構造化面接は相対的に高い位置に残りました。

ここから「構造化面接なら採用に失敗しない」とは言えません。

実務で重要なのは、候補者ごとにまったく別の基準で判断するのではなく、仕事に必要な項目、共通して確認する質問、評価の基準を事前にそろえることです。

面接前に準備すること

面接の質は、当日の話し方より前の準備に大きく左右されます。

最低限、次の5点を確認しておきます。

1.採用要件と評価項目を確認する

最初に、「今回の仕事で何ができる必要があるのか」を確認します。

見るべきなのは、抽象的な人物像だけではありません。

  • 入社後に任せる仕事
  • 期待する成果
  • 入社時に必要な経験・知識・技能
  • 入社後に育成できること
  • 面接で確認する評価項目
  • どの状態なら基準を満たすか

までつなげます。

「明るい」「素直」「自社に合いそう」といった表現だけでは、人によって意味が変わります。

採用要件の作り方や評価基準を確認し、面接官全員が同じ項目を見られる状態にしておきます。

2.応募書類は「確認したい事実」を探すために読む

履歴書や職務経歴書を読む目的は、候補者の印象を先に決めることではありません。

面接で確認したい点を整理するために使います。

たとえば、

  • 担当した業務の範囲が分からない
  • 成果に本人がどこまで関わったのか分からない
  • 転職理由について確認したい
  • 今回任せる仕事と近い経験がある

といった点をメモしておきます。

書類から推測した内容は、事実として扱わず「面接で確認する項目」として残します。

3.全員に確認する共通質問を決める

候補者によって経歴が違うため、すべての質問を完全に同じにする必要はありません。

一方で、採用判断に必要な項目については、全員に共通して確認する質問を決めておいた方が比較しやすくなります。

たとえば、

担当業務の中で、自分で課題を見つけて改善した経験を教えてください。

を共通質問にし、その後、

どのような状況でしたか。
何が課題だと考えましたか。
あなた自身は何をしましたか。
結果はどうなりましたか。

と候補者の回答に合わせて深掘りします。

共通部分と、個別の深掘りを分けて考える方法です。

4.候補者へ説明する内容を確認する

面接は候補者を評価するだけの場ではありません。

候補者も、仕事内容や会社について確認しています。

面接官は少なくとも、

  • 募集背景
  • 任せる仕事内容
  • 入社後に期待すること
  • チームや上司との関係
  • 働き方や条件
  • 選考の流れ

について、求人情報や社内の認識と矛盾しない説明ができるようにします。

よい面だけを強調するのではなく、仕事の難しさや制約など、応募判断に必要な情報も事実に基づいて伝えます。

5.聞いてはいけない事項を共有する

初めて面接官をする人には、質問例だけでなく「確認してはいけない事項」を先に共有しておく必要があります。

厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重し、本人の適性・能力に基づいて採用選考を行うことを示しています。

詳しい注意点は後述します。

採用面接の基本的な進め方

面接の順番に、すべての企業で使う唯一の正解があるわけではありません。

ただし、初めて面接官をする場合は、次のように流れを決めておくと進行しやすくなります。

1.挨拶・自己紹介・面接の流れを伝える

最初に面接官の氏名・所属・役割を伝えます。

あわせて、

  • 今日の面接で確認したいこと
  • おおよその進め方
  • 終了予定
  • 最後に候補者から質問できること

などを簡潔に説明します。

いきなり評価質問から始めるより、候補者が「これから何が行われるのか」を把握できる状態を作ります。

2.これまでの経験を確認する

職務経歴書だけでは分からなかった担当範囲や役割を確認します。

この段階では、経歴を最初から最後まで読み上げてもらう必要はありません。

今回の採用要件と関係する経験を中心に聞きます。

3.評価項目に沿って質問する

事前に決めた評価項目と共通質問に沿って確認します。

重要なのは、回答のうまさだけで判断しないことです。

「私は主体性があります」という自己評価だけでなく、実際に何を考え、何をしたのかまで確認します。

4.回答を具体的な行動まで深掘りする

深掘りの型として、

  • どのような状況だったか
  • 何を達成する必要があったか
  • 本人が何を考え、どう行動したか
  • どのような結果になったか

を確認する方法があります。

STAR(Situation・Task・Action・Result)と呼ばれる整理方法も、このような事実確認に使われます。

ただし、STARという形式を使うこと自体が目的ではありません。

チームの成果と本人の行動を混同せず、「候補者本人が何をしたのか」を確認できることが重要です。

5.会社・仕事内容を説明し、逆質問を受ける

面接官側の質問が終わったら、候補者が応募判断をするための情報を伝えます。

候補者からの質問にも時間を取ります。

その場で答えられないことを推測で回答する必要はありません。

「確認して後ほど回答します」とした方が、誤った情報を伝えるより適切です。

6.今後の流れを伝えて終了する

最後に、

  • 次の選考工程
  • 結果連絡の方法
  • 連絡時期の目安
  • 追加で必要な対応

を伝えます。

選考後の連絡が遅れると候補者側の予定も立てにくくなるため、社内でも誰がいつ連絡するのか決めておきます。

面接前後で辞退が増えている場合は、面接辞退の理由と企業側で確認したいポイントもあわせて確認してください。

面接の質問は「何を評価するか」から作る

面接質問を先に大量に集めても、自社で何を判断したいのか決まっていなければ使い分けられません。

面接の質問を評価項目・共通質問・深掘り・記録する事実の順に設計する流れ
面接質問は、評価したい項目を決めてから、共通質問・深掘り・記録する事実へ落とし込みます。

質問は、

評価項目 → 共通質問 → 深掘り → 記録する事実

の順で考えます。

評価したいこと共通質問の例深掘りすること記録すること
課題整理業務上の課題を自分で整理した経験を教えてください何を課題と判断したか、なぜそう考えたか課題を特定した過程
関係者調整意見が異なる相手と仕事を進めた経験を教えてください相手との違い、本人の働きかけ実際に行った調整行動
改善行動既存のやり方を改善した経験を教えてください本人の提案、実行内容、結果本人が行った具体的行動

これは質問をそのままコピーするための表ではありません。

実際には、任せる仕事から評価項目を決め、それに合わせて質問を作ります。

面接で聞いてはいけない質問・注意すべき事項

採用面接では「会話を盛り上げるため」「人柄を知るため」という理由でも、仕事への適性・能力と関係のない情報を安易に聞かないことが重要です。

厚生労働省は、採用選考時に配慮すべき事項として14項目を示しています。

本人に責任のない事項

次の事項を応募用紙や面接などで把握することは、就職差別につながるおそれがあるとされています。

  • 本籍・出生地
  • 家族の職業、健康、学歴、収入、資産など
  • 住宅状況
  • 生活環境・家庭環境

たとえば、

ご両親は何の仕事をしていますか。
実家は持ち家ですか。

といった質問です。

本来自由であるべき思想・信条に関する事項

次の事項も、公正な採用選考上、把握すべきでない事項として示されています。

  • 宗教
  • 支持政党
  • 人生観・生活信条
  • 尊敬する人物
  • 思想
  • 労働組合への加入状況や活動歴、社会運動
  • 購読新聞・雑誌・愛読書

「尊敬する人は誰ですか」「普段どの新聞を読みますか」といった質問も、単なる雑談として扱わないよう注意します。

選考方法そのものにも注意する

厚生労働省は、次の選考方法にも配慮を求めています。

  • 身元調査
  • 適性・能力に関係のない事項を含む応募書類
  • 合理的・客観的な必要性が認められない採用選考時の健康診断

「14項目すべてを質問した瞬間に同じ法律へ違反する」という整理ではありません。

行政上の公正採用選考の配慮事項と、個別の法的規制を分けて考える必要があります。

職業安定法第5条の5では、求人者を含む事業者が求職者の個人情報を収集・保管・使用する場合、業務目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして取り扱うことが求められています。

また、男女雇用機会均等法では、募集・採用で男女を異なる基準で扱うことが禁止されています。厚生労働省の指針では、たとえば結婚予定や出産後の継続就労について女性だけに質問することが、男女で異なる選考の例として示されています。

男女双方に同じ質問をすれば何でも問題ないという意味でもありません。厚生労働省は、適性・能力を基準とした公正な採用選考の観点から、結婚予定などを募集・採用時に質問すること自体が望ましくないとしています。

迷う質問がある場合は、「この情報は、今回の仕事に必要な適性・能力を判断するために本当に必要か」を確認します。

面接後は「印象」ではなく確認した事実を記録する

面接終了後は、

話しやすかった
優秀そうだった
カルチャーが合いそう

といった印象だけで評価を残さないようにします。

まず、候補者から確認できた事実を記録します。

たとえば、

既存顧客の解約率上昇を確認し、顧客へのヒアリング結果を3つの原因に分類。営業責任者へ改善案を提案し、オンボーディング資料の改訂を担当した。

のように記録します。

そのうえで、

課題整理力:基準を満たす

と評価します。

事実 → 評価基準 → 判断

の順番です。

Google re:Workでも、面接官のフィードバックについて「あいまいな意見」ではなく具体例を残し、仕事と関係のない点を評価せず、記憶が鮮明なうちに記録することを推奨しています。

複数の面接官がいる場合も、最初から全員で相談して一つの印象を作るのではなく、各自が確認した事実と評価を残したうえで違いを確認すると、「なぜ評価が分かれたのか」を話し合いやすくなります。

記録方法については、面接評価シートの作り方も参考にしてください。

面接官マニュアルに入れる最低限の7項目

中小企業の場合、最初から何十ページもの面接官マニュアルを作る必要はありません。

まずは次の7項目を1〜数ページで共有できれば、実際の面接に使いやすくなります。

項目決めておく内容
1.面接の目的今回の面接で何を確認するか
2.評価項目仕事上、何を評価するか
3.共通質問全候補者に確認する質問
4.深掘りどのような事実まで確認するか
5.当日の流れ開始から終了までの進行
6.注意事項公正採用選考、聞かない事項、対応上の注意
7.面接後評価の記録方法、次工程への申し送り

面接官が増えたときも、この7項目が共通言語になります。

特に兼任採用では、「経験のある人が感覚で教える」状態にせず、最低限のルールを文章にしておくことが重要です。

面接官マニュアルは作って終わりにしない

マニュアルを作っても、面接官が読んでいなければ運用は変わりません。

実際の面接を始める前に、

  • 評価項目の意味を確認する
  • 質問の意図を確認する
  • NG質問を確認する
  • 模擬面接を行う
  • 面接後の記録例を見る

といった形で共有します。

Googleでは、新しい面接担当者が経験者の面接を見学する「シャドーイング」や、新任者が面接を行い経験者が観察する「リバース・シャドーイング」、評価のすり合わせを行う運用を紹介しています。

その方法をそのまま導入する必要はありません。

中小企業なら、最初の数回だけ採用担当者や経験者が同席し、終了後に「どの質問で何が確認できたか」「評価が分かれた理由は何か」を振り返るだけでも、マニュアルを改善する材料になります。

まとめ

面接官マニュアルで重要なのは、質問例を大量に用意することではありません。

採用要件から評価項目を決め、共通して確認する質問を用意し、具体的な事実を確認して、基準に沿って評価する一連の流れをそろえることです。

初めて面接官を担当する場合は、まず次の順で準備してください。

  1. 採用要件と評価項目を確認する
  2. 共通質問と深掘りするポイントを決める
  3. 候補者へ説明する仕事内容・条件を確認する
  4. 公正採用選考上、聞かない事項を共有する
  5. 面接の進行を決める
  6. 面接後に事実と評価を記録する

この基本をそろえたうえで、自社の職種や選考段階に応じてマニュアルを更新していくと、面接官が変わっても「何を確認し、何を根拠に判断するのか」を共有しやすくなります。

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