採用基準とは?採用要件から評価項目・判定基準へ落とし込む作り方と具体例

採用基準とは、候補者が自社の求める条件を満たしているか判断するための尺度です。採用要件との違いから、評価項目・着眼点・確認方法・判定基準へ落とし込む作り方、具体例、公正な採用選考上の注意点まで解説します。
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「コミュニケーション能力が高い人」「主体性がある人」「自社に合う人」。
求める人材について社内で話し合うと、このような言葉が採用基準として挙がることがあります。
しかし、この状態では「コミュニケーション能力が高いとは、具体的に何ができることなのか」が決まっていません。そのため、同じ候補者を見ても、面接官によって判断が分かれやすくなります。
採用基準で重要なのは、評価する項目を並べることではありません。
採用要件から、何を確認し、どのような事実を見て、どこまでなら基準を満たしていると判断するのかまで具体化することです。
この記事では、採用基準と採用要件の違いから、実際の選考で使える採用基準の作り方、評価項目の考え方、具体例、公正な採用選考上の注意点まで整理します。
採用基準とは?
採用基準とは、応募者が自社の求める条件を満たしているかを判断するための尺度です。
「採用要件」「採用基準」「評価基準」などの言葉は、企業や資料によって使い方が異なる場合があります。本記事では、次のように整理します。
| 用語 | 本記事での整理 |
|---|---|
| 求める人物像 | どのような人に入社してほしいかを表した人物イメージ |
| 採用要件 | 任せる仕事を遂行するために必要な経験・能力・条件 |
| 採用基準 | 採用要件を満たしているか判断するための尺度 |
| 評価項目 | 選考で何を確認するか |
| 着眼点 | 評価するために見る具体的な事実・行動 |
| 判定基準 | どの状態なら基準を満たすと判断するか |
採用実務では、求める人材像をそのまま選考で使うのではなく、職種ごとに必要な能力や行動を整理し、評価項目や着眼点、判定基準まで具体化していきます。
つまり、採用基準は「どのような人が必要か」と「その人をどう見極めるか」をつなぐものと考えると分かりやすいでしょう。
採用要件と採用基準の違い
たとえば、営業職について、
顧客の課題を整理して提案できる人が必要
と決めたとします。
これは「どのような能力が必要か」を定めた採用要件です。
しかし、実際の選考では、
- 何をもって「課題を整理できる」とするのか
- 候補者のどの経験を確認するのか
- 回答のどこを見るのか
- どの状態なら基準を満たしているのか
まで決めなければ、判断は面接官に委ねられます。
この「どう判断するか」を具体化したものが採用基準です。
そのため、採用基準だけを先に作るのではなく、「なぜ採用するのか」「どの仕事を任せるのか」「何ができればよいのか」という採用要件を先に整理する必要があります。
採用要件の考え方については、関連記事「採用要件とは?」で詳しく解説しています。
採用基準を決める必要がある理由
採用基準を作る目的は、すべての面接官が必ず同じ点数を付けることではありません。
重要なのは、候補者を見る観点と判断の根拠を揃えやすくすることです。
面接官ごとの「なんとなく」を減らすため
たとえば、同じ候補者について次のような評価が出たとします。
- 面接官A:「話しやすかったので、コミュニケーション能力が高い」
- 面接官B:「説明が長かったので、コミュニケーション能力は低い」
二人とも「コミュニケーション能力」を評価していますが、実際に見ているものは異なります。
そこで、
自社の仕事におけるコミュニケーション能力とは、具体的に何ができることなのか
まで定義します。
営業職であれば、
- 相手の話から要点を整理できる
- 相手の理解度に合わせて説明できる
- 意見が異なる場合にも理由を伝えて調整できる
など、仕事上必要な行動へ分解できます。
採用基準を作っても、人による判断から主観が完全になくなるわけではありません。
それでも、なぜその評価になったのかを同じ観点から話し合える状態には近づけられます。
採用要件を実際の選考で使える状態にするため
「法人営業経験3年以上」「特定資格を保有」といった条件は、書類から比較的確認しやすい項目です。
一方で、
- 課題整理力
- 主体性
- 協働力
- 調整力
といった能力や行動は、言葉を決めただけでは判断できません。
採用実務では「適性」「能力」「意欲」などの観点から評価項目を整理する方法もありますが、大切なのは一般的な項目をそのまま使うことではありません。
自社で任せる仕事から逆算し、選考で確認する必要がある項目を絞り込むことが重要です。
採用結果を振り返れるようにするため
採用時の判断理由が、
感じがよかった
優秀そうだった
うちに合いそうだった
だけでは、後から採用活動を振り返ることが難しくなります。
どの項目について、どのような事実から評価したのかを残しておけば、
- 面接官によって判断が分かれやすい項目はないか
- ほとんどの候補者が満たせない基準になっていないか
- 採用時に重視している項目は現在の仕事にも必要なのか
といった確認がしやすくなります。
採用基準は一度決めて終わりではなく、仕事内容や採用状況の変化に応じて見直すことが重要です。
採用基準を作る前に採用要件を確認する
採用基準を作る前に、そもそも「何を判断したいのか」が決まっているかを確認します。
先に整理したいのは、
- なぜ採用するのか
- どのような仕事を任せるのか
- どのような成果を期待するのか
- そのために何が必要なのか
という採用要件です。
MUSTとWANTを分ける
採用要件を整理するときは、すべての条件を同じ重要度で扱わないことも大切です。
たとえば、
MUST
- 採用時点で仕事を任せるために必要な条件
WANT
- あれば望ましいが、入社後の習得などでも対応できる条件
というように整理します。
条件を増やすほど、そのすべてを満たす候補者は少なくなります。
採用基準へ落とし込む前に、本当に採用時点で必要な条件なのかを確認しておきましょう。
抽象的な要望は「仕事上必要な行動」まで具体化する
現場から、
- 主体性のある人
- コミュニケーション能力が高い人
- カルチャーフィットする人
といった要望が出ること自体は問題ではありません。
ただし、この言葉のままでは選考で判断しにくいため、
どのような仕事で、具体的に何ができることを意味しているのか
まで確認します。
たとえば「主体性」であれば、「何でも一人で判断すること」が必要なのか、「課題を見つけたときに、自分から関係者へ相談して行動できること」が必要なのかでは意味が違います。
抽象語をそのまま評価するのではなく、自社の仕事に必要な行動へ変換してから採用基準を作ることが重要です。
採用基準の作り方|要件から判定まで5段階で落とし込む
採用基準は、次の5段階で整理すると選考で使いやすくなります。
採用要件
→ 評価項目
→ 着眼点
→ 確認方法
→ 判定基準
ここでは、架空の営業職を例に考えます。
1.採用要件を一つ選ぶ
まず、任せる仕事から必要な要件を一つ取り出します。
今回は、
顧客の課題を整理して提案できる
とします。
「主体性」「コミュニケーション能力」といった抽象的な言葉から始めるのではなく、仕事で何ができる必要があるのかから考えます。
2.何を評価するのか決める
次に、その要件を評価するための項目を決めます。
今回であれば、
評価項目:課題整理力
と設定できます。
ただし、「課題整理力」という言葉だけではまだ具体的な評価はできません。
3.何を見れば判断できるかを「着眼点」にする
次に、課題整理力がある人は、仕事の中でどのような行動をしているのかを考えます。
たとえば、
- 相手から言われた要望だけで判断していない
- 要望が出てきた背景を確認している
- 問題の原因を整理している
- 複数の課題がある場合に優先順位を付けている
- 必要に応じて当初の要望とは異なる提案をしている
などです。
この「具体的に何を見るか」が着眼点です。
4.選考でどう確認するか決める
着眼点を決めたら、どのような質問や確認方法で確かめるかを考えます。
たとえば、
過去に、顧客から最初に相談された内容とは異なる提案をした経験はありますか?
と質問したとします。
「あります」で終わらせず、
- どのような状況だったか
- 顧客は何を求めていたか
- 何を問題だと考えたか
- 自分は何をしたか
- なぜその対応を選んだか
- 結果はどうなったか
と、実際の経験を具体的に確認します。
重要なのは、「自分は課題解決力があります」という自己評価だけで判断するのではなく、過去の経験や行動という事実から判断材料を集めることです。
面接で確認する項目・質問・判定基準の組み立て方は、採用面接の評価基準で詳しく整理しています。
5.どこまでなら基準を満たすか決める
最後に、どの状態なら基準を満たしていると判断するのかを決めます。
たとえば次のように整理できます。
基準を満たしている例
顧客の要望をそのまま受けるだけでなく、背景や原因を確認し、自分なりに課題を整理したうえで提案した経験を具体的に説明できる。
基準を満たしていない例
顧客から言われた内容を正確に実行した経験は確認できるが、自ら課題を整理して提案した事実は確認できない。
整理すると、次のようになります。
| 段階 | 営業職の例 |
|---|---|
| 採用要件 | 顧客の課題を整理して提案できる |
| 評価項目 | 課題整理力 |
| 着眼点 | 要望の背景・原因・優先順位まで整理しているか |
| 確認方法 | 過去の提案経験について状況・判断・行動を確認する |
| 判定基準 | 自分が考えたことと行動したことを具体的な事実から説明できる |
点数化する場合も、先にこの中身を決めます。
「5点=非常によい」「3点=普通」「1点=悪い」と点数だけ決めても、何が5点なのかが面接官ごとに違えば評価基準として十分に機能しません。
採用基準に設定する評価項目の考え方
採用基準の項目は、一般的なテンプレートから大量に選ぶのではなく、職種と任せる仕事から必要なものを選ぶことが基本です。
経験・スキルなど比較的確認しやすい項目
比較的確認しやすいものとしては、
- 特定業務の実務経験
- 専門知識
- 使用ツールや技術の経験
- 資格
- マネジメント経験
などがあります。
ただし、「経験3年以上」のように年数だけを基準にする場合も、その年数が必要な理由を考えます。
たとえば「法人営業3年以上」をMUSTにしている場合、
3年間経験していること自体が必要なのか、それとも一定の顧客折衝を一人で担当できることが必要なのか
では意味が違います。
本当に必要なのが後者であれば、年数以外の方法で確認できる可能性があります。
能力・行動は自社の仕事に合わせて定義する
- コミュニケーション能力
- 主体性
- 協調性
- リーダーシップ
- 課題解決力
といった能力や行動を評価項目にする場合は、
自社のこの仕事において、その能力がある人は何ができるのか
まで定義します。
たとえば、営業職とエンジニアでは、必要な「コミュニケーション能力」が同じとは限りません。
一般的な評価項目一覧をそのまま使うより、任せる仕事から必要な行動を考える方が、採用基準としての意味は明確になります。
価値観やカルチャーフィットは慎重に扱う
「カルチャーフィットする人」「自社らしい人」という基準は、扱いに注意が必要です。
「なんとなく雰囲気が合う」「自分たちと似ている」といった感覚が判断基準になると、仕事に必要な適性・能力とは異なる要素が入り込みやすくなります。
価値観を確認する場合も、できるだけ業務上必要な行動へ置き換えます。
たとえば、
顧客からの要望であっても、必要だと判断すれば別の意見を伝えることが求められる
という仕事であれば、
意見が異なる相手に対して、自分の考えを理由とともに伝えた経験があるか
という形で確認できます。
「うちっぽい人」を探すのではなく、その職場で仕事を進めるために必要な行動は何かを考える方が、採用基準として具体的です。
採用基準を作るときの注意点
採用基準は、細かく厳しく設定すればよいわけではありません。
実際の採用市場と合っているか、選考で判断できる内容になっているかも確認する必要があります。
基準を増やしすぎない
現場の要望を集めていくと、
- 同業界経験
- 同職種経験
- マネジメント経験
- 特定資格
- コミュニケーション能力
- 主体性
- リーダーシップ
- 自社文化への適応
など、条件が増えていくことがあります。
しかし、MUST条件を追加するほど、そのすべてを満たす候補者は限られます。
条件を追加するときは、
この条件がなければ、入社後に任せたい仕事が本当にできないのか
を確認します。
必要性を説明できない条件は、WANTへ変更したり、入社後に習得できる条件として整理したりする余地があります。
採用市場とすり合わせる
自社の理想だけで採用基準を決めても、その条件に該当する人が採用市場にほとんどいなければ採用は難しくなります。
たとえば、
同業界経験5年以上、マネジメント経験、特定分野の専門知識をすべて必須とする
と決めたのであれば、
- その条件を満たす候補者が市場にどの程度いるのか
- 競合企業はどのような条件で募集しているのか
- 自社が提示できる給与や仕事内容と釣り合っているのか
まで確認する必要があります。
採用基準を単純に下げればよいわけではありません。
「仕事を任せるために必要な条件」と「理想として加えている条件」を分けることが重要です。
採用基準を作って終わりにしない
仕事内容や事業の状況が変われば、必要な人材も変わります。
採用活動を進めながら、
- 基準を満たす候補者から実際に応募があるか
- 特定の項目だけ面接官によって評価が大きく分かれていないか
- 現在の仕事内容に対して不要になった基準はないか
などを確認します。
一定期間ごとに必ず変更する必要があるということではありません。採用する職種や仕事内容、市場環境が変わったときには、既存の基準をそのまま使ってよいかを確認しましょう。
採用基準では「適性・能力」と関係のない事項を判断材料にしない
採用基準を作る際は、公正な採用選考にも注意が必要です。
厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、
- 応募者の基本的人権を尊重すること
- 応募者の適性・能力に基づいた基準で採用選考を行うこと
を示しています。
つまり採用基準は、求人職種の仕事を遂行するために必要な適性・能力をもとに設計することが基本です。
また、適性・能力に関係のない事項については、採用基準に含めなければよいだけではありません。
厚生労働省は、こうした情報を応募用紙に記載させたり、面接で質問したりすることによって把握しないことも重要としています。
本人に責任のない事項
厚生労働省が、採用選考で把握することが就職差別につながるおそれがある事項として挙げているものには、たとえば次があります。
- 本籍・出生地
- 家族に関すること
- 住宅状況
- 生活環境・家庭環境
これらは、原則として応募者本人が求人職種の仕事を遂行できるかどうかを判断する情報ではありません。
思想・信条など本来自由であるべき事項
同様に、
- 宗教
- 支持政党
- 人生観・生活信条
- 尊敬する人物
- 思想
- 労働組合や社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書
なども、採用選考で把握することが就職差別につながるおそれのある事項として示されています。
ここで重要なのは、「面接で聞いてはいけない質問一覧」だけを覚えることではありません。
その情報が、任せる仕事に必要な適性・能力を判断するために本当に必要なのかという観点から採用基準や質問内容を確認することが重要です。
採用基準を運用するときは、評価の根拠を残す
採用基準を作った後は、実際の選考で「何を根拠に評価したのか」を確認できるようにします。
評価項目だけでなく事実を記録する
たとえば、
主体性:4点
だけでは、後から見てもなぜ4点だったのか分かりません。
それよりも、
新規プロジェクトで自ら課題を整理し、上司へ改善案を提案したうえで実行した経験を確認
といった事実を記録しておく方が、評価の根拠を確認しやすくなります。
点数を使う場合も、先に確認した事実があり、その事実を基準に照らして評価するという順番にした方が判断しやすくなります。
評価結果と根拠を記録する形式は、面接評価シートの作り方を参考にしてください。
面接官同士で評価基準を合わせる
採用基準を作成しても、面接官がそれぞれ異なる解釈をしていれば、判断は揃いません。
少なくとも、
- 評価項目の定義
- 見るべき着眼点
- どのような事実を確認するか
- どの状態を基準を満たしているとするか
は事前に共有しておきます。
厚生労働省・労働局も、公正な採用選考を行うための実務上のポイントとして、面接の質問事項をあらかじめ設定することや、質問事項・留意点を面接担当者間で確認すること、適性・能力に基づいて評価することなどを示しています。
目標は、全員が機械的に同じ点数を付けることではありません。
評価が違ったときに、「どの事実をどのように判断したため評価が違ったのか」を話し合える状態を作ることが重要です。
採用基準の具体例
最後に、職種ごとの採用基準の考え方を整理します。
以下は設計方法を説明するための架空の例です。そのまま自社へ流用するのではなく、実際に任せる仕事から考えてください。
営業職の例
採用要件
顧客の課題を整理して提案できる
評価項目
課題整理力
着眼点
- 要望の背景まで確認しているか
- 原因と課題を分けて考えているか
- 自分なりの提案につなげているか
確認する事実
過去の顧客提案で、相手の当初要望とは異なる提案をした経験と、その判断理由
採用担当者の例
採用要件
複数の採用施策から優先順位を判断できる
評価項目
課題分析・優先順位付け
着眼点
- 数字や事実から問題点を整理しているか
- 施策を何となく増やしていないか
- 優先順位を付けた理由を説明できるか
確認する事実
応募数や選考数値などを確認し、採用施策の優先順位を変更した経験
リーダー候補の例
採用要件
他のメンバーと協力して業務を進められる
評価項目
協働力
着眼点
- 意見が違う相手の考えを確認しているか
- 自分の意見を理由とともに説明しているか
- 合意できない場合に調整方法を考えているか
確認する事実
メンバー間で意見が分かれた状況と、その際に本人が取った行動
同じ「コミュニケーション能力」「協調性」といった言葉でも、職種や任せる仕事によって見るべき事実は変わります。
具体例は項目をコピーするためではなく、自社の採用基準をどこまで具体化するかを確認する参考として使いましょう。
まとめ|採用基準は「評価項目」ではなく「判断できる状態」まで作る
採用基準を作るときは、「主体性」「コミュニケーション能力」「協調性」といった評価項目を並べるだけで終わらせないことが重要です。
実際の選考で使うためには、
採用要件
→ 評価項目
→ 着眼点
→ 確認方法
→ 判定基準
まで具体化します。
そのうえで、
- 本当に仕事に必要な基準なのか
- 採用市場とかけ離れていないか
- 面接官の間で意味を共有できているか
- 適性・能力と関係のない情報を判断材料にしていないか
を確認します。
採用基準の目的は、候補者を細かく点数化することではありません。
自社が何を必要としているのかを明確にし、その人を採用する・しないという判断を、具体的な事実をもとに説明できる状態を作ることが重要です。


