採用ターゲットとは?決め方・設定項目と採用ペルソナとの違いを解説

採用ターゲットの意味と決め方を、採用要件から候補者層へ落とし込む5ステップで解説。設定項目・具体例・採用ペルソナとの違い、年齢や性別を扱う際の注意点まで整理します。
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採用ターゲットを決めるときは、「30代の営業経験者」「明るくコミュニケーション能力が高い人」のような人物像から考え始めるのではなく、まず何の仕事を任せ、どのような成果を期待するのかを整理することが重要です。
そのうえで、仕事に必要な経験・能力を採用要件として整理し、「実際にどのような経験を持つ候補者まで採用対象にするか」へ落とし込んでいきます。
本記事では、この採用活動でアプローチする候補者層を「採用ターゲット」として整理します。
採用ターゲットは細かく設定すればよいわけではありません。条件を増やしすぎれば対象者を必要以上に狭める一方、曖昧すぎれば求人媒体やスカウトで誰を探すのか決められません。
採用要件との違い、採用ペルソナとの使い分けから、実際の決め方、具体例、設定時に注意したい年齢・性別の扱いまで順番に解説します。
採用ターゲットとは?採用活動でアプローチする候補者層
「採用ターゲット」という言葉は、企業や採用支援サービスによって使い方に幅があります。
本記事では、採用要件をもとに、求人・スカウト・人材紹介などで実際に募集・接触する候補者層を整理したものを採用ターゲットと呼びます。
たとえば、法人営業を採用するとします。
「法人営業経験3年以上の人」と年数だけで絞るのではなく、
- どのような顧客を担当してきたか
- どのような提案をしてきたか
- 何を一人で任せたいのか
- 別の職種や業界の経験で代替できないか
まで考えると、仕事に必要な能力を保ちながら、対象となる候補者層を整理できます。
似た言葉との違いは、次のように考えると分かりやすくなります。
| 用語 | 本記事での整理 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 採用要件 | 仕事を任せるために必要な経験・能力・条件 | 募集条件・選考設計 |
| 採用ターゲット | 採用要件をもとに、実際に募集・接触する候補者層 | 母集団形成・媒体・スカウト |
| 採用ペルソナ | ターゲット層を代表する候補者像を具体化した仮説 | 求人訴求・情報設計 |
| 採用基準 | 候補者が要件を満たすかを判断する尺度 | 書類選考・面接 |
採用要件については、採用要件とは?「なぜ必要か」から逆算する作り方と具体例で詳しく整理しています。
候補者が何を知りたいか、どのような情報に反応しそうかまで具体化したい場合は、採用ペルソナとは?作り方・項目例と採用ターゲットとの違いを解説へ進むとつながりが分かりやすくなります。
採用ターゲットを決める前に、採用要件を整理する
採用ターゲットだけを先に考えると、「前任者と似た人」「若くて経験がある人」「自社に合いそうな人」のように、人物イメージへ条件を足していく設計になりやすくなります。
先に確認したいのは、その人に任せる仕事です。
厚生労働省の「職業能力評価基準」では、仕事をこなすために必要な「知識」「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例」を業種・職種・職務別に整理しており、採用にも活用できるとしています。
採用ターゲットを考える場合も、
採用背景 → 任せる仕事 → 期待成果 → 必要な経験・能力 → 候補者層
の順に整理すると、「なぜその人を対象にするのか」を説明しやすくなります。
たとえば、「営業経験3年以上」という条件が出た場合、そのままターゲットにする前に理由を確認します。
営業経験3年以上
↓
なぜ必要なのか
↓
入社後、早い段階で顧客との商談を一人で担当してほしい
↓
本当に必要なのは何か
↓
顧客の状況を聞き、課題を整理して提案した経験ではないか
ここまで分解できれば、「営業経験3年以上」に限定せず、同じ能力を別の仕事で身につけた人まで候補にできる可能性があります。
採用ターゲットは、理想のプロフィールを作る作業ではなく、仕事に必要な条件を、採用市場で探せる候補者層へ変換する作業と考えると使いやすくなります。
採用ターゲットの決め方|5ステップで整理する
採用ターゲットは、次の5ステップで整理できます。

STEP1.採用背景と入社後の役割を明確にする
最初に「どのような人が欲しいか」ではなく、今回の採用によって何を解決したいのかを確認します。
同じ営業職でも、
- 退職者が担当していた既存顧客を引き継ぐ
- 新規顧客を増やす
- 営業チームをマネジメントする
- 営業企画や仕組みづくりを任せる
では、必要な経験や能力が異なります。
最低限、
- 採用する理由
- 任せる仕事
- 入社後に期待する役割
- どの時点で何を任せたいか
を整理します。
「営業を採用したい」だけではなく、「何を任せる営業なのか」まで決めることが出発点です。
STEP2.必要な条件をMUST・WANT・入社後習得可能に分ける
必要な経験や能力を洗い出したら、すべてを必須条件にはしません。
| 分類 | 考え方 |
|---|---|
| MUST | 入社時点でなければ、想定する仕事を任せることが難しい |
| WANT | 持っていれば立ち上がりが早い、または任せられる範囲が広がる |
| 入社後習得可能 | OJT・教育・実務経験によって身につけられる |
特に確認したいのは、「その条件を持っていない人を本当に不採用にするのか」です。
たとえば特定業界の経験をMUSTにしていても、実際に必要なのが「法人顧客へ複数の選択肢を比較しながら提案した経験」であれば、他業界の経験者でも代替できるかもしれません。
MUSTを増やすより、なぜ必要なのかを説明できる条件だけを残す方が、次のターゲット設定につなげやすくなります。
STEP3.採用要件を「候補者層」へ置き換える
次に、採用要件を採用市場で探せる候補者層へ変換します。
たとえば、次のように考えます。
| 採用要件 | ターゲットを考えるときの問い |
|---|---|
| 法人顧客の課題を整理できる | どのような職種・業務で同じ経験を積めるか |
| 顧客へ提案できる | 営業以外に代替できる職種はないか |
| 複数部署と調整できる | どのような役割なら同じ行動を経験しているか |
| 特定の資格が必要 | 法令・業務上、本当に採用時点で必要か |
| 特定ツールを使える | 入社後に習得できないか、類似ツール経験で代替できないか |
ここで重要なのは、採用要件を単純な検索条件へ変換するだけではないことです。
「この能力は、どのような経験から身につく可能性があるか」と考えると、隣接する職種・業界まで対象を広げられる場合があります。
STEP4.採用市場と自社の条件を確認する
社内でターゲットを決めても、その条件を満たす人を現実的に採用できるとは限りません。
次のような点を確認します。
- 該当する経験を持つ候補者へ接触できるか
- 同じ層をどのような企業が募集しているか
- 自社の給与や勤務地、働き方は競合と大きく離れていないか
- 必須条件を増やしすぎていないか
- 別の経験・スキルで代替できないか
- 入社後育成へ回せる条件はないか
候補者が少ない場合に、「もっと優秀な人を探す」「媒体を増やす」だけで解決しようとすると、同じ狭いターゲットを別の場所で探し続けることになります。
ターゲットそのものが現実的か、自社側の条件を変える必要がないかまで確認します。
STEP5.経営・現場・採用担当で認識を合わせる
最後に、採用に関わる人でターゲットを確認します。
たとえば、
- 経営者は「将来の幹部候補」
- 現場は「すぐ一人で働ける即戦力」
- 採用担当者は「現在の給与で採用できる人」
を想定していると、同じ求人でも見ている人物像が異なります。
そこで、
- 入社後に任せる仕事
- MUST条件
- 代替可能な経験
- WANT条件
- 入社後に育成できること
- 今回は対象にしない理由
を文章にして共有します。
「良い人がいれば採る」という状態ではなく、何を満たす人をどこまで対象にするのかを決めておくことが重要です。
採用ターゲットで整理したい項目
採用ターゲットの設定項目を増やしすぎる必要はありません。
中小企業であれば、まず次のような情報を整理すると実務へつなげやすくなります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象ポジション | 職種、所属、任せる役割 |
| 必要な経験・能力 | 入社時点で必要なMUST条件 |
| 代替できる経験 | 別職種・別業界などで置き換えられる経験 |
| 歓迎条件 | あれば立ち上がりや業務範囲にプラスになる条件 |
| 入社後に習得できること | 自社で教育・OJTできる領域 |
| 働くために必要な条件 | 勤務地、勤務時間など職務上必要な条件 |
| 対象となる候補者層 | どのような職種・役割・経験を持つ人へ接触するか |
一方で、
- 趣味
- 家族構成
- 出身地
- 愛読書
- 何となく「自社らしい」と感じる属性
など、仕事に必要な適性・能力と関係のない情報を採否の条件へ入れる必要はありません。
厚生労働省も、公正な採用選考の基本として、応募者に広く門戸を開き、本人の適性・能力に基づいた採用基準とすることを示しています。
ターゲットの「解像度を上げる」ことと、採用に不要な属性まで細かく決めることは分けて考えましょう。
採用ターゲットの設定例|法人営業を採用する場合
例として、中小企業が法人営業を1名採用するケースを考えます。
1.採用背景・任せる仕事
既存顧客への対応を担当する人員が不足しており、顧客の課題を確認しながら追加提案まで担える人を採用したいとします。
2.必要な採用要件
仕事から逆算すると、たとえば次のように整理できます。
MUST
- 法人顧客と継続的にやり取りした経験がある
- 相手から必要な情報を聞き、課題を整理した経験がある
- 顧客の状況に合わせて提案内容を組み立てた経験がある
WANT
- 新規提案や追加提案を担当した経験
- CRMなどで顧客情報を管理した経験
入社後に習得可能
- 自社の商品知識
- 自社固有の営業フロー
- 社内システムの操作方法
3.採用ターゲットへ変換する
この要件であれば、ターゲットを「同業界の営業経験者」だけに限定する必要があるとは限りません。
たとえば、
- 法人営業として顧客への提案を担当してきた人
- カスタマーサクセスなどで顧客課題の把握と追加提案を経験した人
- 異業界でも、法人顧客に対する提案型の仕事をしてきた人
などまで対象を広げられる可能性があります。
反対に、「30代」「男性」といった属性は、上記の仕事を遂行できることを直接示す条件にはなりません。
採用ターゲットは「誰っぽいか」ではなく、必要な仕事をできる可能性がある候補者は、どのような経験を持つ層かという形で考えると整理しやすくなります。
採用ターゲットが広すぎる・狭すぎるときの見直し方
採用ターゲットは、一度決めたら固定するものではありません。
実際に求人やスカウトを始めた後の反応から、前提を見直します。
「誰でもよい」に近くなっている場合
たとえば、
- コミュニケーション能力が高い
- 成長意欲がある
- 主体性がある
だけでは、どの候補者へ声をかけるのか判断できません。
抽象的な性格ではなく、
「顧客へ質問し、必要な情報を引き出せる」
「自分で課題を見つけ、関係者へ相談しながら進めた経験がある」
のように、仕事上の行動へ戻して整理します。
条件を詰め込みすぎている場合
反対に、
- 同業界
- 同職種
- 特定の経験年数
- 特定ツール経験
- マネジメント経験
- 特定資格
をすべてMUSTにすると、それらを同時に満たす人だけが対象になります。
それぞれについて、
- 本当に採用時点で必要か
- 別の経験で代替できないか
- 入社後に身につけられないか
を確認します。
応募が来ないからといって、すぐターゲットを広げない
応募が少ない原因はターゲットだけとは限りません。
- 給与などの条件
- 仕事内容の分かりにくさ
- 求人の露出
- 採用チャネル
- 会社や仕事の情報不足
などでも応募は変わります。
ターゲットを変更する前に、どの段階で候補者が少なくなっているかを確認しましょう。
応募が集まらない場合の切り分け方は、求人を出しても応募が来ない原因は?求人票を直す前に確認したいポイントでも解説しています。
年齢や性別を採用ターゲットにするときは法令に注意する
採用ターゲットを考えるときに、特に注意したいのが年齢や性別です。
年齢は原則として募集・採用の制限に使えない
労働施策総合推進法では、募集・採用における年齢制限が原則禁止されています。
厚生労働省は、求人票を「年齢不問」としながら、実際には年齢を理由に応募を断ったり、書類選考・面接で年齢を基準に採否を判断したりすることも法の規定に反すると説明しています。
例外として年齢制限が認められる場合はありますが、条件が定められています。
そのため、社内向けの採用ターゲットであっても「30代だから対象」「40歳以上だから見送り」のように年齢を実質的な採否条件として運用するのではなく、
- 必要な職務経験
- 任せたい役割
- 必要な知識・技能
- 入社後に期待する職務遂行能力
へ置き換えて考えることが重要です。
年齢制限の例外を使う場合は、厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」で現在の条件を確認してください。
性別を理由とする差別的な募集・採用も原則禁止されている
男女雇用機会均等法では、労働者の募集・採用における性別を理由とする差別的取扱いが原則禁止されています。
たとえば「営業職は男性を対象にする」といった形で、性別そのものを採用ターゲットや採否条件にするのではなく、その仕事に必要な能力・条件を整理します。
採用ターゲットを具体化することは、年齢・性別などの属性で候補者を狭くすることではありません。
仕事に必要な適性・能力を明確にし、どのような経験を持つ人ならその条件を満たす可能性があるのかを整理することが基本です。
採用ターゲットを決めた後は、求人・チャネル・スカウトへつなげる
採用ターゲットは、設定シートを作って終わりではありません。
決めた後は、採用活動の各工程へ反映します。
求人情報
ターゲットに必要な仕事・役割が伝わるように、仕事内容や募集背景を整理します。
「若手が活躍中」「成長できる会社」といった抽象的な表現だけでなく、入社後に何を任せるのかを説明します。
採用チャネル
どのような経験を持つ候補者へ接触したいかによって、求人媒体、人材紹介、スカウトなどの役割は変わります。
ターゲットだけを理由に媒体の優劣を決めるのではなく、職種・地域・予算・採用期限・社内工数も合わせて判断します。
採用チャネルとは?主な種類と自社に合う選び方・見直し方でも、チャネルごとの考え方を整理しています。
採用ペルソナ
ターゲットが決まり、求人やスカウトで「何を伝えるか」を具体化したい場合は、採用ペルソナを使えます。
ただし、すべての募集で細かな架空人物を作る必要はありません。
候補者が応募時に何を知りたいのか、どこに不安を持つのかを考えるために必要な範囲だけ具体化します。
選考
候補者を実際に評価するときは、採用ターゲットのイメージだけで判断せず、採用要件を評価可能な採用基準へ落とし込みます。
詳しくは、採用基準とは?採用要件から評価項目・判定基準へ落とし込む作り方と具体例で解説しています。
採用ターゲットは「誰へ募集・接触するか」、採用基準は「応募してきた人を何によって判断するか」と役割を分けておくと、採用活動全体を整理しやすくなります。
まとめ|採用ターゲットは「理想の人」ではなく、仕事から逆算して決める
採用ターゲットを決めるときは、いきなり理想の人物像を作るのではなく、
採用背景 → 任せる仕事 → 期待成果 → 採用要件 → 採用ターゲット
の順で整理します。
採用要件をMUST・WANT・入社後に習得できる条件へ分けたうえで、「同じ能力を別の経験で身につけた人はいないか」まで考えると、必要な水準を保ちながら候補者層を見直せます。
また、社内で理想の人材像を決めるだけではなく、採用市場、競合する求人、自社が提示できる条件とすり合わせることも必要です。
ターゲットを細かくすること自体を目的にせず、求人・スカウト・チャネル選定へ実際に使える状態を目指しましょう。
そして、年齢や性別などで候補者を安易に限定せず、仕事を遂行するために必要な適性・能力・経験へ置き換えて考えることが、公正で実務に使える採用ターゲット設計につながります。


