採用予算の立て方|採用コストをもとに決める手順と見直し方

採用予算の立て方を、採用コストとの違い、相場データの見方、採用人数・職種・チャネルから予算を組み立てる手順、予算と実績の見直し方まで解説します。
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採用予算を決めるとき、「前年と同じ金額でよいのか」「採用人数に対していくら確保すればよいのか」と迷うことがあります。
採用予算は、平均相場を調べて金額を決めれば終わりではありません。
まず、誰を何人、いつまでに採用するのかを確認します。そのうえで、自社の過去の採用コストや採用単価、利用する採用チャネル、社内で必要になる工数を整理し、必要な金額を積み上げていくと考えやすくなります。
この記事では、採用予算と採用コストの違いから、相場データを見るときの注意点、採用予算を立てる手順、実績を見ながら予算を見直す方法まで整理します。
採用予算とは?採用コストとの違い
「採用予算」「採用コスト」「採用単価」は似ていますが、同じものとして扱うと数字を判断しにくくなります。
公的に統一された一つの定義があるわけではないため、この記事では実務上、次のように整理します。
| 用語 | この記事での整理 | 確認するタイミング |
|---|---|---|
| 採用予算 | これからの採用活動に使うために事前に計画した金額 | 採用活動の開始前・見直し時 |
| 採用コスト | 実際の採用活動で発生した費用 | 採用活動の実行後 |
| 採用単価 | 採用コストを採用人数で割り、1人あたりに直した指標 | 実績分析・次回予算の検討時 |
つまり、
採用予算=計画
採用コスト=実績
と考えると分かりやすくなります。
採用単価は、その実績を次回の予算へつなげるための一つの材料です。
たとえば前年の採用で、特定職種・特定チャネルの採用単価を把握できていれば、次年度に同じような採用を行う際の予算見積もりに利用できます。
ただし、前年と今年で採用する職種、採用人数、期限、給与条件、採用チャネルが違えば、同じ採用単価になるとは限りません。
そのため、
前年の採用単価 × 今年の採用人数
だけで予算を確定するのではなく、前提が変わっていないかも確認する必要があります。
採用人数や採用要件、期限を含めて採用活動全体を整理したい場合は、採用計画の立て方もあわせて確認してください。
採用予算の相場はいくら?平均値はそのまま使わない
採用予算を検討するとき、最初に「他社はいくら使っているのか」を調べたくなるかもしれません。
外部調査は、自社の金額が大きく外れていないかを見る参考にはなります。
一方で、調査ごとに、
- 年間総額なのか、1人あたりなのか
- 新卒採用なのか、中途採用なのか
- 外部へ支払った費用だけなのか、社内人件費も含むのか
- どの職種・企業規模・地域が対象なのか
- どの時期の実績なのか
が異なります。
数字だけを並べて「採用予算の平均は○万円」と判断しないことが重要です。
年間の採用費用と1人あたりの採用費用は別の数字
マイナビの「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」では、2024年の中途採用費用総額は1社平均650.6万円、平均採用人数は20.8人とされています。
これは、調査対象企業における年間の中途採用費用総額の平均です。
一方、リクルート就職みらい研究所の「就職白書2020」では、2019年度の1人あたり平均採用コストについて、
- 新卒採用:93.6万円
- 中途採用:103.3万円
という結果が示されています。
こちらは1人あたりの平均採用コストであり、年間総額とは単位が違います。
また、2019年度のデータであるため、現在の予算をそのまま決める基準として使うのではなく、採用コストが企業や採用区分によって異なることを確認する参考値として見る必要があります。
採用手法によっても費用構造は違う
厚生労働省が令和3年に実施した「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査」では、正社員の採用1件あたりの平均コストとして、
| 採用手法 | 平均コスト | 回答数 |
|---|---|---|
| 民間職業紹介事業者 | 85.1万円 | n=175 |
| インターネットの求人情報サイト | 28.5万円 | n=254 |
| スカウトサービス | 91.4万円 | n=51 |
| 知り合い・社員等からの紹介 | 4.4万円 | n=99 |
| 自社HP等からの直接応募 | 2.8万円 | n=150 |
という結果が示されています。
この数字からも、採用方法によって費用の発生の仕方が大きく違うことが分かります。
ただし、これは令和3年に実施された調査です。また、手法ごとに回答数も違います。
「人材紹介なら85.1万円を予算に入れればよい」という意味ではありません。
外部の平均値は、自社の予算を決める答えではなく、自社の見積もりに抜けや極端なずれがないかを確認する参考情報として使う方がよいでしょう。
採用予算を立てる前に確認したい3つのこと
予算表を作る前に、採用活動の前提をそろえます。
ここが曖昧なままだと、精密な予算表を作っても根拠が弱くなります。
1.誰を何人採用するのか
まず確認したいのは採用人数です。
ただし、「営業3名」のように人数だけを決めるのではなく、
- 募集する職種
- 採用する理由
- 必要人数
- 必要な経験・スキル
- 入社してほしい時期
まで整理します。
同じ1名の採用でも、対象となる候補者や採用期限が違えば、利用できる採用チャネルや必要な費用は変わります。
採用要件が厳しく、期限も短い場合には、求人を掲載して待つ方法だけでは必要な母集団を作れないこともあります。
採用予算は人数だけではなく、「どのような人を、いつまでに採るのか」とセットで考えます。
2.どの期間の予算なのか
年間の採用予算なのか、半年なのか、一つの募集ポジションなのかを決めます。
期間が混在すると、
今月は予算を使いすぎている
と思っていても、成果報酬型サービスの支払いが特定の月に集中しただけということがあります。
反対に、年間予算の消化率だけを見ると、必要な時期までに採用できていない状態を見落とす可能性もあります。
予算と実績を比較するときは、
対象期間と対象ポジションをそろえる
ことが基本です。
3.どこまでを採用予算として管理するのか
採用活動では、求人広告や人材紹介のように社外へ直接支払う費用だけでなく、社内の時間も使います。
たとえば、
外部への支出
- 求人広告・求人媒体
- 人材紹介
- ダイレクトリクルーティング
- 採用管理ツール
- 求人・採用サイト制作
- 採用イベント
- 採用代行
社内で使う工数
- 採用担当者の求人作成・応募者対応
- スカウトの検索・送信
- 現場責任者の書類選考
- 面接官の面接時間
- 採用会議や日程調整
などがあります。
すべてを厳密に金額換算する必要はありません。
ただし、「掲載料金は安いが毎週大量の運用時間が必要」といった施策を、料金だけで比較すると判断を誤りやすくなります。
専任の採用担当者がいない会社では、外部費用とは別にどの程度の社内工数が必要かも確認しておくと、実行可能な予算を組みやすくなります。
採用予算の立て方|5つの手順で考える
ここからは、採用予算を実際に組み立てる方法を整理します。

以下は公的な標準計算式ではなく、複数の調査と採用実務をもとにしたサイヨミとしての整理です。
1.採用人数・職種・期限を確定する
最初に、採用計画から必要な採用を抜き出します。
最低限、
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 職種 | 何を採用するか |
| 人数 | 何人必要か |
| 採用理由 | 欠員・増員・新規事業など |
| 採用要件 | 必要な経験・スキル |
| 入社期限 | いつまでに必要か |
を整理します。
複数職種を募集する場合は、全社の採用人数をまとめて考えるより、ポジション別に分けた方が予算を立てやすくなります。
採用難易度も使うチャネルも違うためです。
2.過去の採用コストと採用単価を確認する
次に、自社の過去実績を確認します。
たとえば職種・チャネルごとに、
- いくら使ったか
- 何件応募があったか
- 採用要件に合う応募は何件だったか
- 何人面接したか
- 何人採用できたか
- どの程度の社内工数がかかったか
を整理します。
採用単価を使う場合は、
採用単価 = 対象とする採用コスト ÷ 採用人数
で確認できます。
ここで大切なのは、毎回同じ費用範囲で計算することです。
ある年度は求人広告費だけ、別の年度は人材紹介費や採用ツールまで含めている状態では、単価の変化を正しく比較できません。
また、会社全体の平均採用単価だけでなく、できれば職種別・チャネル別にも分けます。
営業職を求人媒体で採用した実績を、専門職の人材紹介予算にそのまま当てはめても、精度の高い予算にはなりません。
採用コストそのものの計算や内訳を詳しく確認したい場合は、採用コストの記事を参考にしてください。
3.今年使う採用チャネルごとに費用を積み上げる
過去実績を確認したら、今年利用する採用チャネルを決めます。
採用チャネルには、それぞれ異なる費用構造があります。
| 採用チャネル | 予算を考えるときの確認点 |
|---|---|
| 求人媒体 | 掲載費、掲載期間、追加オプション、再掲載の可能性 |
| 人材紹介 | 成功報酬の条件、想定年収、採用予定人数 |
| ダイレクトリクルーティング | 利用料、送信可能数、候補者検索・送信に必要な工数 |
| リファラル | 紹介制度の運用費、インセンティブの有無 |
| 自社採用サイト | 制作・更新費用、求人作成や運用工数 |
| 採用管理ツール | 月額・年額などの固定費、利用期間 |
ここでは「安いチャネルから使う」のではなく、
採用したい人と接点を持てるか
必要な期限までに採用できる見込みがあるか
自社で運用できるか
を合わせて確認します。
採用チャネルの特徴や選び方は、採用チャネルとは?で詳しく整理しています。
4.固定費と採用人数に応じて増える費用を分ける
採用予算は、費用の発生方法も分けておくと見直しやすくなります。
たとえば、
比較的固定しやすい費用
- 採用管理ツールの年間利用料
- 採用サイトの制作・保守
- 定額型サービスの契約費
採用人数や利用量で変わりやすい費用
- 人材紹介の成功報酬
- 採用人数に応じたインセンティブ
- 追加掲載・追加スカウトなど
です。
採用予定人数が変わったとき、すべての費用が同じ割合で増減するわけではありません。
そのため、
固定費+ポジション別・チャネル別に変動する費用
として分けておくと、「1人追加採用すると、どの費用が増えるのか」を考えやすくなります。
5.予算の見直し条件をあらかじめ決める
採用予算は、年度初めに決めた金額を最後まで使い切るためのものではありません。
実際に募集を始めると、
- 想定より応募が少ない
- 応募はあるが採用要件に合わない
- 面接までは進むが辞退が多い
- 予定より早く採用できた
- 特定チャネルだけ成果が出ている
といったことが分かります。
そこで、
いつ、何を見て、予算配分を変えるのか
を事前に決めておきます。
たとえば毎月、
- 予算額
- 実際に使った金額
- 応募数
- 採用要件に合う応募数
- 面接数
- 内定数
- 承諾数
- 入社数
を確認します。
採用KPIについては、採用KPIとは?で計算方法と見直し方を解説しています。
採用予算は「予算消化率」だけで評価しない
予算管理では、
予算消化率 = 実際に使った金額 ÷ 予算額 × 100
を見る方法があります。
ただし、採用では予算消化率だけを見ても成果は判断できません。
たとえば、
予算を使っていない・採用も進んでいない
一見すると「予算を節約できている」ように見えます。
しかし、必要な人材を期限までに採用できなければ、採用計画としては問題があります。
そもそも施策を十分に実行できているか、候補者との接点を作れているかを確認します。
予算を使っている・採用が進んでいない
追加予算を投入する前に、
- 求人が見られていないのか
- 応募されていないのか
- 採用要件に合う人が来ないのか
- 選考途中で辞退されているのか
を分けます。
原因を確認せずに媒体を追加すると、同じ問題にさらに予算を使うことになりかねません。
予算を使っている・採用も進んでいる
計画に対して費用と採用人数の両方が進んでいる状態です。
ただし、採用数だけでなく、採用要件に合っているか、選考途中の辞退が増えていないかなども確認します。
予定より少ない予算で採用できた
余った予算を必ず別の採用施策へ使う必要はありません。
今後の欠員や追加募集へ備えるのか、次の募集へ回すのか、不要なら使わないのかを判断します。
重要なのは、予算を使い切ることではなく、必要な採用を実現するために使うことです。
採用予算の配分を見直すときは採用ファネルを見る
「予算が足りない」と感じたときも、すぐに総額を増やす必要があるとは限りません。
まず、
認知・求人表示
↓
求人閲覧
↓
応募
↓
書類選考
↓
面接
↓
内定
↓
承諾・入社
のどこで候補者が減っているかを確認します。
たとえば求人の表示自体が少ないなら、チャネルや露出への投資を見直す余地があります。
一方、応募は十分あるのに採用要件に合う人が少ない場合は、単純に広告費を増やしても解決しない可能性があります。
また、内定まで進んでも承諾されない場合には、採用広告よりも求人条件、仕事内容の説明、選考体験などを確認した方がよいケースもあります。
採用の歩留まりを工程別に確認する方法は、採用の歩留まりとは?も参考にしてください。
採用予算を決めるときによくある4つの失敗
前年と同じ金額をそのまま使う
前年実績は重要な材料ですが、今年も同じ条件とは限りません。
- 採用人数
- 募集職種
- 採用期限
- 給与条件
- 利用チャネル
- 採用市場
のどこが変わったかを確認します。
前年予算は「答え」ではなく、今回の見積もりを作るための比較材料です。
平均相場をそのまま自社へ当てはめる
採用費用の平均値は、調査対象や費用の定義によって大きく変わります。
自社の実績があるなら、
自社の過去実績 → 近い職種・チャネルの実績 → 外部の参考値
の順で見る方が、予算の根拠を作りやすくなります。
求人広告や人材紹介の料金だけを見る
料金が低くても、大量のスカウト送信や応募者対応が必要であれば、兼任担当者には運用できない可能性があります。
反対に外部費用が高くても、採用期限や採用する職種によっては、その手法を選ぶ合理性があることもあります。
費用だけでなく、
対象者・期限・運用工数・選考後の成果
まで確認します。
採用単価を下げること自体を目的にする
採用単価が低いほど、必ず採用がうまくいっているわけではありません。
予算を削減した結果、
- 必要な人数を採用できない
- 採用要件に合う応募が集まらない
- 採用期限に間に合わない
のであれば、事業側の目的を達成できません。
採用単価は重要な指標ですが、採用人数・採用要件・期限とセットで見ます。
中小企業なら、まずは一つの表で採用予算を管理する
専任の採用担当者がいない会社では、最初から複雑な予算管理システムを作る必要はありません。
まずは、職種ごとに次の項目を一つの表へまとめる方法があります。
| 管理項目 | 確認すること |
|---|---|
| 募集職種 | 何を採用するか |
| 採用予定人数 | 何人必要か |
| 入社期限 | いつまでに必要か |
| 採用チャネル | どの方法を使うか |
| 予算 | いくら使う予定か |
| 実績費用 | 実際にいくら使ったか |
| 応募数 | どれだけ応募があったか |
| 有効応募 | 採用要件に合う応募がどれだけあったか |
| 面接数 | 選考へ進んだ人数 |
| 内定・承諾・入社 | 採用までどこまで進んだか |
| 運用負荷 | 自社でどの程度の工数がかかったか |
| 次の判断 | 継続・改善・縮小・追加など |
月末に数字だけを入力するのではなく、
何に予算を使ったか
どこまで採用が進んだか
次に何を変えるか
まで一緒に残しておくと、次年度の採用予算を作る材料になります。
現在の採用費用を整理したい場合は、採用コスト見直しシートも利用できます。
まとめ|採用予算は「人数×相場」だけで決めない
採用予算は、平均相場や前年の総額だけで決めるものではありません。
まず、
誰を・何人・いつまでに採用するのか
を整理します。
そのうえで、
採用計画
↓
自社の過去実績
↓
職種別・チャネル別の採用コスト
↓
今年使う採用チャネル
↓
必要な外部費用と社内工数
↓
予算案
という順で組み立てると、予算の根拠を説明しやすくなります。
採用活動が始まった後は、
予算 → 実績費用 → 応募・選考 → 採用結果
をつなげて確認します。
予算が余ったか、オーバーしたかだけではなく、「何に使い、採用のどこまで進んだのか」を見ることが重要です。
外部の相場は参考になりますが、自社と同じ職種・人数・採用方法とは限りません。
まず自社の数字を残し、その実績を次の採用予算へ戻していくことが、継続的に予算精度を高める基本です。


