採用工数とは?計算・見える化の方法と削減するときの確認ポイント

採用工数とは何かを、求人作成・応募者対応・日程調整・面接・社内調整などの業務に分けて解説します。採用工数の計算・見える化の方法、平均値を見るときの注意点、削減する順番まで採用担当者向けに整理します。
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採用担当者が求人作成、応募者への連絡、日程調整、面接、社内確認などを兼務していると、「採用に時間がかかっている」と感じても、具体的にどの業務が負担になっているのか分からないことがあります。
こうしたときに確認したいのが採用工数です。
採用工数を減らすときは、いきなりATSやAIなどのツールを導入するのではなく、まず採用業務を工程に分けて、どこに時間がかかっているのかを把握することが重要です。
この記事では、採用工数の考え方、計算・見える化の方法、工数を削減するときの確認順を整理します。
この記事でわかること
- 採用工数とは何を指すのか
- 採用業務のどこに工数が発生するのか
- 採用工数の平均値を見るときの注意点
- 自社の採用工数を計算・見える化する方法
- 採用工数を削減するときの確認順
- 削減してよい作業と、人が時間を使いたい判断の分け方
採用工数とは
採用工数は、採用活動を進めるために社内で使っている時間や人的リソースを把握するための考え方です。
たとえば採用では、次のような業務が発生します。
- 採用計画を作る
- 採用要件を決める
- 求人票を作成・修正する
- 求人媒体を管理する
- スカウト候補者を探して送信する
- 応募者の書類を確認する
- 応募者へ連絡する
- 面接日程を調整する
- 面接を実施する
- 面接評価を記録する
- 現場や経営者と採否を相談する
- 採否を候補者へ連絡する
- 内定後のフォローをする
- 採用数値を集計する
「採用工数」という名称について、日本の法令や行政統計などで統一された公的定義や標準的な計算式は、今回確認した資料からは確認できませんでした。
そのため、「採用工数は○時間が平均」と一律に考えるのではなく、自社でどの仕事に、誰が、どれだけ時間を使っているのかを見るための実務指標として扱うと分かりやすくなります。
採用コストとの違い
採用工数と採用コストは、分けて考えます。
| 見るもの | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 採用工数 | 社内で使った時間、関与人数、作業量 |
| 採用コスト | 求人広告費、人材紹介手数料、ツール費、人件費など |
たとえば、無料で利用できる採用チャネルでも、候補者検索やスカウト送信に多くの時間が必要なら、社内工数は発生しています。
反対に、外部費用が高くても、社内で必要な作業を減らせる採用方法もあります。
採用施策を比較するときは外部費用だけでなく、必要な社内工数も確認しましょう。
採用費用の考え方は、採用コストとは?平均・計算方法と1人あたりの採用単価の見方でも解説しています。
採用工数は面接以外にも発生している
採用というと面接に使う時間をイメージしやすいですが、その前後にも細かな作業があります。
Indeed Japanが2021年に採用実務担当者1,647名を対象に実施した調査では、採用・人事以外の業務も担当していた人は72.4%でした。
また、全業務時間のうち採用業務に割いていた時間は平均43.4%で、従業員2〜299名の企業では平均35.5%でした。
これは2021年の特定調査の結果であり、現在のすべての企業へ当てはまる平均値ではありません。
一方で、専任ではなく他業務と兼務しながら採用を進めている担当者が存在することは、採用工数を考えるうえで押さえておきたい点です。
同じ調査では、応募後から内定までの採用フローにおいて、「面接の実施・同席」に使われていた時間は平均16.1%、面接前の各種調整業務は平均52.4%でした。
採用工数を見るときは、面接時間だけではなく、その前後の作業まで分けて確認する必要があります。
工程別に見ると、細かな作業時間が見えてくる
株式会社ゼクウが2026年3月に全国の採用担当者・人事責任者1,002名を対象に行った調査では、応募者1名に対する工程別の作業時間が調べられています。
| 工程 | 作業時間の中央値 |
|---|---|
| 面談後の記録 | 21分 |
| 日程調整 | 14分 |
| 連絡の往復 | 13分 |
| 合否・社内すり合わせ | 12分 |
| 採否連絡 | 10分 |
| 書類確認 | 4分 |
この調査で使われている時間は担当者の自己申告であり、実測値ではありません。また、各工程では対象や作業範囲に重なりがあるため、単純に合計して「応募者1人に74分かかる」と計算することはできません。
重要なのは数値そのものよりも、日程調整、連絡、記録、社内確認など、一つひとつは短く見える作業にも時間が積み重なるという点です。
同調査では、応募者対応全体をまとめて聞いた場合の中央値は約10分でしたが、日程調整だけを個別に聞くと中央値は14分でした。
「採用対応に何時間かかっていますか」と大きくまとめて聞くより、工程ごとに分けた方が、自社でも工数を見つけやすくなります。
採用工数の平均はどのくらい?
今回確認した公的資料や調査からは、日本企業全体に共通する「採用工数の平均○時間」という標準値は確認できませんでした。
公開されている工数データを見る際は、
- 新卒採用か中途採用か
- 月間応募者数は何人か
- どこからどこまでを工数に含めているか
- 採用担当者だけか、面接官や現場社員も含むか
- 実測か自己申告か
- 1応募者あたりか、1採用あたりか
- 調査時期はいつか
などを確認する必要があります。
企業によって採用人数、募集職種、チャネル、選考回数、担当人数が異なるため、他社平均だけで「自社は時間を使いすぎている」と判断するのは難しいでしょう。
まずは自社の工数を同じ定義で記録し、前月や改善前後で比較する方が、改善箇所を判断しやすくなります。
採用工数を計算・見える化する方法
採用工数に公的な標準計算式は確認できないため、自社で管理する場合はシンプルな方法から始めます。

サイヨミでは、実務上の整理として次のように考えます。
採用工数 = 1回あたりの作業時間 × 発生回数 × 関与人数
これは業界共通の公式ではなく、自社の作業量を把握するための計算方法です。
1.採用業務を工程に分ける
最初に、現在行っている採用業務を並べます。
たとえば、
求人作成
→ 求人掲載・更新
→ 応募確認
→ 書類確認
→ 応募者への連絡
→ 日程調整
→ 面接
→ 評価入力
→ 合否確認
→ 採否連絡
→ 内定フォロー
のように分けます。
スカウトや人材紹介を利用している場合は、それぞれの運用業務も追加します。
2.誰が担当しているかを確認する
同じ採用業務でも、
- 採用担当者
- 経営者
- 現場責任者
- 面接官
- 現場メンバー
など、複数人が関わる場合があります。
採用担当者の時間だけを記録すると、現場面接や社内のすり合わせに使っている時間が見えません。
工数を把握するときは「採用担当者が忙しいか」だけではなく、会社全体で採用にどれだけ時間を使っているかも必要に応じて確認します。
専任担当者がいない会社の役割分担については、採用担当者がいない会社はどうする?中小企業の採用の進め方で詳しく整理しています。
3.一定期間、実際の作業時間を記録する
次に、各作業に使った時間を記録します。
最初から細かい管理システムを作る必要はありません。
| 工程 | 担当 | 作業時間 | 発生回数 | 待ち時間・手戻り |
|---|---|---|---|---|
| 応募確認 | ||||
| 書類確認 | ||||
| 応募者への連絡 | ||||
| 日程調整 | ||||
| 面接 | ||||
| 評価入力 | ||||
| 合否確認 | ||||
| 採否連絡 |
ここで「作業時間」だけでなく、誰かの返事を待って止まっていた工程も記録しておくと、改善箇所を判断しやすくなります。
4.時間が長い工程と、回数が多い工程を分ける
1回の作業時間が長い業務だけが問題とは限りません。
1回あたりは短くても、
- 応募ごとに何度も発生する
- 複数人との往復が必要
- 同じ内容を複数システムへ入力する
- 毎回ゼロから文章を作成する
といった業務は、総工数が大きくなる可能性があります。
「1回に何分かかるか」と「何回発生しているか」を分けて確認しましょう。
工数が大きい原因は「作業時間」だけではない
工数を見える化したら、時間がかかっている理由を確認します。
大きく分けると、次のような状態があります。
同じ作業を何度も繰り返している
たとえば、
- 同じ応募者情報を複数の表へ入力する
- 毎回同じ案内メールを一から作る
- 同じ数字を複数の資料へ転記する
といった状態です。
作業そのものは必要でも、入力場所や方法をまとめられないか確認します。
誰かの判断待ちで止まっている
工数は「手を動かしている時間」だけではありません。
書類選考の結果を現場から回収する、面接官の予定を確認する、条件を経営者へ確認するなど、複数人が関わる工程では待ち時間が発生します。
ゼクウの2026年調査では、選考が滞る要因として「社内の合否判断・条件調整」が40.2%、「日程調整」が37.3%、「面接官・現場からの評価回収」が35.3%でした。
これは同調査対象者における回答であり、すべての企業で同じ順になるわけではありません。
ただし、自社の採用が遅れている場合は、担当者個人の作業量だけでなく、誰の判断・確認で止まっているかも確認する価値があります。
役割やルールが決まっていない
「応募が来たら誰が見るか」「面接後に誰が採否を決めるか」が決まっていなければ、毎回確認が必要になります。
採用業務の属人化を減らすには、
- 担当者
- 判断する人
- 次に行うこと
- 共有場所
を決めておくことが重要です。
採用工数を削減するなら、ツール導入より先に業務を見直す
工数が大きいことが分かると、すぐにATSやAI、自動化ツールを探したくなるかもしれません。
しかし、不要な業務をそのまま自動化しても、不要なプロセス自体は残ります。
業務改善で使われる考え方の一つに、ECRS(イクルス)があります。
PERSOLの解説では、業務を次の順に見直すフレームワークとして紹介されています。
- Eliminate:なくせないか
- Combine:一緒にできないか
- Rearrange:順序や担当を変えられないか
- Simplify:もっと簡単にできないか
採用業務にも、この順番を当てはめて考えられます。
1.なくせないか
まず、そもそも必要なのかを確認します。
たとえば、
- 誰も見ていないレポート
- 同じ内容を確認する重複承認
- 目的が曖昧な定例会議
- 採否判断に使っていない入力項目
などです。
ツールで速くする前に、不要ならやめる方が工数は減ります。
2.一緒にできないか
次に、分かれている作業をまとめられないか確認します。
たとえば、
- 選考進捗を複数の表で管理している
- 現場と人事で別々に同じ情報を記録している
- 複数回に分けて同じ内容を確認している
のであれば、一つの管理方法へまとめられないか考えます。
3.順番や担当を変えられないか
作業自体は必要でも、順番や担当によって往復が増えている場合があります。
たとえば日程調整なら、
候補者
→ 採用担当者
→ 面接官
→ 採用担当者
→ 候補者
と何度も往復している状態と、面接可能枠を先に共有して候補者が選べる状態では、必要な連絡回数が変わります。
「誰がやるか」だけでなく、「いつ情報を渡すか」も確認します。
4.もっと簡単にできないか
最後に、必要な作業を簡単にします。
- 定型メールをテンプレート化する
- 面接評価項目を統一する
- 入力する情報を必要な項目に絞る
- リマインドを自動送信する
- 日程調整をシステム化する
- 採用データを一か所で管理する
などが考えられます。
ここまで整理してから、ATS・AI・RPAなどのツールが必要かを判断します。
「作業」と「判断」を分けると削減しやすい
採用工数を減らすときは、業務を一律に削減するのではなく、定型的な作業と、会社として必要な判断を分けると整理しやすくなります。
| 業務 | 見直しの方向 |
|---|---|
| 日程候補日の往復 | 仕組み化・自動化を検討 |
| 定型連絡・リマインド | テンプレート・自動化を検討 |
| 応募者情報の転記 | 入力先の統合・連携を検討 |
| 選考進捗の集計 | 一元管理・自動集計を検討 |
| 面接評価の記録 | 評価項目・入力方法の標準化を検討 |
| 採用要件の決定 | 経営・現場を含めて判断 |
| 候補者の評価 | 職務に必要な基準に基づいて判断 |
| 条件・採否の最終判断 | 社内で責任者を決めて判断 |
| 候補者への仕事内容の説明 | 必要な情報を持つ人が対応 |
工数がかかるからといって、判断まで機械的に減らせばよいわけではありません。
特に採用要件、候補者評価、採否、労働条件などは、会社として判断する必要があります。
採用工数を削減するときに落としたくない3つのこと
採用工数の削減は、単純に「時間が短くなれば成功」ではありません。
少なくとも次の3点をあわせて確認します。
1.候補者への対応速度
工数削減によって、候補者への初回連絡や日程調整が遅くなっては本末転倒です。
ゼクウが2026年に月間応募50名以上の企業を対象として行った調査では、中途採用担当者793名の回答において、応募への初回対応が5分未満の層と3日以上の層で面接予約率に差が観察されています。
これは大量採用を行う企業を対象とした調査であり、「5分以内なら必ず採用成果が上がる」という意味ではありません。
ただし、工数削減後も候補者対応が遅くなっていないかは確認した方がよいでしょう。
2.候補者への対応品質
ゼクウの採用工数調査では、業務量が増えたときに応募者対応のスピード・丁寧さが落ちると「時々ある」「頻繁にある」「常態化している」と答えた人は合計53.5%でした。
これは担当者の主観的な回答であり、業務量が品質低下を直接引き起こしたことを証明するデータではありません。
それでも、
- 連絡漏れが増えていないか
- 定型文だけで必要な説明が抜けていないか
- 候補者からの質問へ回答できているか
は、工数とあわせて確認したい項目です。
3.選考の公平性と必要な判断
業務を簡略化するときも、選考基準まで曖昧にしてはいけません。
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、応募者の適性・能力に関係のない事項を把握して採否判断に用いないことが示されています。
評価項目を減らしたり面接を標準化したりする場合も、「入力項目を減らすこと」と「必要な評価をなくすこと」は分けて考えます。
また、応募者情報をATSや外部サービスなどで扱う場合は、利用目的や情報の取扱いも確認します。
個人情報保護委員会のガイドラインQ&Aでも、採用応募者の個人情報を扱う際の利用目的や共同利用に関する考え方が示されています。
工数削減後は「何時間減ったか」だけで評価しない
採用工数を見直した後は、削減した時間だけでなく採用活動の状態も確認します。
たとえば、
| 見る項目 | 確認すること |
|---|---|
| 採用工数 | 工程ごとの時間がどう変わったか |
| 対応速度 | 応募から初回連絡・面接設定までが遅くなっていないか |
| 滞留 | 判断待ち・日程調整待ちが減ったか |
| 歩留まり | 面接設定・実施・内定・承諾などに変化がないか |
| 対応品質 | 連絡漏れや候補者からの問い合わせが増えていないか |
| 採用成果 | 最終的な採用につながっているか |
工数を半分にしても、候補者対応が遅くなったり選考の質が下がったりすれば、改善とは言い切れません。
反対に、工数が大きく減らなくても、社内の待ち時間が減り、必要な判断や候補者との対話へ時間を使えるようになったのであれば、意味のある改善の場合があります。
採用プロセスのどこで候補者が減っているかを確認する場合は、採用の歩留まりとは?計算方法・平均の見方と改善ポイントも参考にしてください。
継続的に見る数字を決めたい場合は、採用KPIとは?見るべき指標・設定方法と改善につなげる見方で整理しています。
採用工数を減らす方法は、自社のボトルネックによって変わる
採用工数が大きいときの解決策は、一つではありません。
たとえば、
日程調整の往復が多い → 日程調整の方法やツールを見直す
現場から評価が戻らず止まる → 評価項目・期限・担当者を決める
同じ情報を何度も入力している → 管理場所を統合する
採用担当者に作業が集中している → 社内の役割分担を見直す
定型作業が大量に発生している → 自動化・外部化を検討する
というように、原因によって打ち手は変わります。
「採用業務を効率化したい」からツールを探すのではなく、
どの工程に、どの程度の工数があり、なぜ時間がかかっているのか
を先に確認しましょう。
まとめ|採用工数は、工程ごとに測ってから削減する
採用工数を見直すときは、採用業務全体を「忙しい」とまとめないことが重要です。
まず、
- 採用業務を工程に分ける
- 誰が担当しているか確認する
- 工程ごとの作業時間と発生回数を記録する
- 作業時間・待ち時間・手戻りを分ける
- 工数が大きい原因を確認する
という順で整理します。
そのうえで、
なくす → まとめる → 順番・担当を変える → 簡単にする
という順に見直し、必要な部分だけツール・自動化・外部支援を検討すると、不要な仕組みを増やしにくくなります。
採用工数には、日本企業全体で使える一律の平均や標準計算式があるわけではありません。
他社の数字だけで多い・少ないを判断するのではなく、自社の採用活動を工程に分け、どこに時間を使い、何を減らし、何に時間を残したいのかを確認するところから始めましょう。


